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/ // /‐───- 、 \ /r‐─‐ァーf/ /-────-、 \\ ヽ / ∨三/'¨7 / / / \厶 ハ ',. / \/__,/ / ,イ l | il V∧ハ / _//〉‐/ /\/ |i |l | 丶 i| l ト、 ', ,′ f⌒∨ / /ハ {\! |l !{ \ i| | トく l / ハ. V /ィfテミ、 ヽ八 ヽ ヽ_| l |/ | l l 〈_∧ ', ハ{_f j リヾ ヽ∧>七 j ! |_ | | l _ム _ ゝへ| V;之_ _ ヽハ ,' / | \| | l >'´ ヽ ィ≡气 / / l\/! | l | -ー―一ヘ , 、__ ヽ 〃 /| ∧ | j八 | __} { `ア ,ムイ / ,イ__j│ ,r≦三ヘ  ̄ ト、 ` ー' ,. イl│ Ⅳ / | jlリ / / ハ _, --‐〈. >‐r< /l│ 〃 / j / // / | ハ , イ1 / ヽ./ ∧/ / /'. 〆 / い \ -< }}/ ̄ ̄`ヽ>ーイ 、 / 〈 / ∨ 代\ ハ、 , -―‐- 丶 //丁fヽ ∧/ ∨ `三彡' \ __ ∨´ |│ l l | \==彳│ \/ ` | |│ l l | `ー‐ ´ | \ l| |│ l新ステータス┏[ステータス表示]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┃名前:ハルヒ┃種族:恐族 神性:恐神 職業:ギガ・ウルリクムミ【IDOL】(A+)/新参┃使用AA:涼宮ハルヒの憂鬱 より 「涼宮ハルヒ」┃ 天元突破グレンラガン より 「ラガン」┃┃体力:D (EX) + 1┃戦闘:A+ (EX) + 1┃術式:E (C)┃敏捷:E (A)┃指揮:E (C)┃知性:E (C) + 1┃魅力:E (C) + 1┃幸運:E (A)┃自由点:1 好感度:C++┃┃▼種族スキル┃○伸縮自在:LvB 重複:なし+上位優先┃ 自軍に含まれる恐族の兵数を1000倍にする。┃┃▼職業スキル┃○砕けえぬ巨神 重複:なし┃ 自身のスキルは無効化されず、自身は地形:水中の影響を受けない。┃┃○大陸砕き 重複:なし┃ 戦闘開始時、敵軍の兵士200人×自身の戦闘倍率を気絶させる。┃┃▼汎用スキル┃○戦闘経験:LvB 重複:なし+上位優先┃ 自身が参謀の場合、自身の指揮に++補正。┃┃○設備の知識:LvC 重複:あり┃ 自身が設備を担当する場合、メインの体力に+補正。サブでも発動可能。┃┃○一騎当千:LvA 重複:なし ┃ 自身を大隊(10000人)として扱う。 ┃┃○バトルスーツ・バーストモード【創世王軍】 重複:なし┃ 自軍の戦闘・敏捷に+補正。┃┃○鋼の肉体 重複なし┃ 自身は気絶を1度だけ無効にできる。肉体の強度は鋼の如く、いかなる攻撃も寄せ付けない。┃┃○アイドルの才能:LvC 重複なし┃ 自身を新人アイドルとして扱う。┃┗━━━
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月曜の朝はいつにも増してうだるい朝だった。俺は基本的に冬より夏のほうが好みの人間だが、こんなじめじめした日本の夏となると、どちらが好きか十秒程度考え直す可能性も否定できないくらいに微妙である。途中で出くわした谷口や国木田とともにハイキングコースを登頂したが、校門に辿り着く頃にはシャツが既に汗ばんでいた。ハルヒの判断は懸命である。長門がいない上にこの暑さでは、映画撮影などやってられん。 二年の教室に入って自分の席に着くと、後ろでスタンバっていたハルヒが肩を叩いてきた。 「ねえキョン、夏休みにやらなきゃいけないことって何だと思う?」 「ああ、そういや、もうそんな季節だな。俺にとってはどーでもいいことだけどよ」 「何よそれ」 「失言だ。忘れてくれ。それで何だって?」 俺は教室内を見回しながら訊いた。今日もとりあえず危険人物はいないが、このままいったら夏休み中の俺はブルー一色に染まること間違いなしだ。 「夏休みにやらなきゃいけないことよ。時間は刻一刻と過ぎていくんだから、常に次のことを考えてないと生きていけないわ」 「次のことまで考える余裕があるなんてうらやましいね。そんなもん、夏休みが来たときに考えればいい」 ハルヒは俺の意見を無視して一人で目を輝かせ、 「とにかく合宿は不可欠よね。てか、決まっちゃったし。そしてプールと花火大会とバイトと……」 「あと宿題な」 「何よそれ、夏だってのにシケてるわねえ」 そんなこともない。永遠に終わらない夏とどっちがいいかって言われたら俺は迷わず宿題を選択するぜ。 「やっぱ夏よ、夏! 高校に入るまでこんなに夏休みを待ち遠しく思ったことなんてないわ」 「へえ。高校の夏休みってのはそんなに面白いもんだったか?」 ハルヒは俺の問いに自然に――本当にごく自然に――答えた。 「SOS団で騒げるんだもん。楽しいに決まってるじゃん!」 俺は一瞬言葉を失って、妙な空白があった後にああそうだよなと相槌を打った。俺の笑顔は引きつっていたことだろう。 古泉の言っていたことはそんなに的外れではないのかもしれなかった。 楽しさの対象が宇宙人でも未来人でも超能力者でもないことを、ハルヒは自ら断言したのだ。悪いことじゃない。俺の目の前でハルヒが屈託なく笑ってやがるのも一年前にはありえなかった光景だと思えば、ハルヒの状態は確実によくなりつつあるということになる。 そこで俺ははたと考え込む。 しかしそれは、いったい誰にとってなんだろうか。ハルヒの精神が落ち着いてきていい状態だというが、それは誰にとっていいんだ? 俺にとってか。それともバイトが減る『機関』にとってなのか。 ハルヒがどこにでもいるフツーの女子高生になっちまうことを俺は本当に望んでいるか? 俺だけではない。朝比奈さんも古泉も、本当にそう望んでいるのだろうか。もし個人個人の持つ雑多な事情から解放されたとしたら、その答えは変わるかもしれん。少なくとも古泉はそう言っていた。 SOS団という謎の団体に俺は何かを感じていたのだった。もちろんそのSOS団は休日に遊ぶ仲間の集まりなんかではない。宇宙人の長門と未来人の朝比奈さんと超能力者の古泉と、ハルヒと、そして俺がいる団体こそがSOS団なのだ。いつの間にヒマな高校生の集まりに成り下がっちまったんだ。 そう思ってから、俺はまた頭をかきむしった。たった今、俺は、成り下がるという言葉を無意識に用いて、休日に遊ぶ仲間の集まりという意味でのSOS団を否定してしまっていたのだった。肩書きはどうあれ朝比奈さんと長門と古泉がいればいいという、そのきれい事のような考えだけでは割り切れないような感情が俺の奥底に、確かにあった。 ハルヒは何の迷いもない顔をしている。ただ、その銀河群が入っていそうな瞳の輝きが少し薄れているだけだ。惜しみなく部室専用スマイルをふりかけるハルヒを、俺はただぼんやり眺めていた。 * ハルヒの一年時のメランコリーをリアルな感じで悟りつつある俺は、結局昼休みまで動く気力が出なかった。 一年前の春、何で宇宙人に固執するんだと訊いた俺に、そっちのほうが面白いじゃないのと当然のように答えたハルヒはどこへ行っちまったのか。窓の外を眺めているとなぜか思考が巡りに巡ってしまうようなので、俺はシャーペンをつかんで黒板に焦点を合わせ、授業を受けるべくしていた。 昼休み、俺が後ろを振り向くとハルヒはすでにおらず、おそらく学食か購買へ行ったものと思われる。 俺もそろそろ部室に行かねばならんだろうと思っていると、谷口と国木田が近づいてきた。 国木田は俺の顔をまじまじ見て、 「キョンさあ、最近疲れてるのかなあ」 唐突な指摘の質問に俺は多少びっくりしながら、 「そうかもしれんな。ハルヒといれば誰だってこうなるぜ」 もっとも昨日今日の疲れはハルヒパワーが全開であるための疲れではないというのは胸の内に収めておく。むしろハルヒが騒ぎ立ててくれていたら俺の疲れも多少は癒されていたというか、俺の心のわだかまりも忘れることができたのかもしれん。 谷口が俺の頭をポンポンと叩いてきた。 「まったく、うらやましい野郎だ。たとえ相手が涼宮だとしても、女と一緒にいて遊び疲れたってのは贅沢の極みをいく悩みだぜ。ああくそ、俺、もういっそのこと涼宮でもいいから狙っちまおうかなあ。おめーら、まだ付き合ってねえんだろ?」 何を血迷ってるんだ。他の女なら俺が紹介できる限りでしてやるから、ハルヒだけはやめておけ。あの狂気にやられて、生活を狂わされちまった実例がお前の目の前にいるんだよ。ハルヒは常人が相手にできるような奴ではない。奴と同じくらい狂ってる人間か、あるいは釈迦並の寛大さを持ち合わせた奴じゃないと無理だ。 「いいや、そんなことはない。あいつだって一応は女だ。ひっくり返せばけっこう常識的な人間だぜ。これはなあキョン、涼宮と五年間も一緒のクラスでいる俺の境地に達したから解ることなんだ。あいつは、けっこうまともな人間だ」 まともな人間ね。谷口の言葉すら煩わしく感じた。そんなことは俺だって知ってるんだよ。 そりゃよかったなと適当に返事をして、俺は弁当箱を持って立ち上がった。 「あれキョン、教室で食べないのかい?」 「部室で食うよ。悪いな」 とにかく今はハルヒのことで頭を悩ませている場合ではない。いや、そういうと何か変わりつつあるハルヒに後ろめたいのだが、俺の頭のデキは誰もが知るとおりである。そんなたくさんのことに気を回していたらパンクしちまう。 チープでありきたりな描写で申し訳ないのだが、俺にはこの時すでに予感があった。 窓の外の世界が、二年五組の風景が、ハルヒが、もっと言うと俺の目に入るすべてのものが妙な嘘っぽさを纏っていた。平べったい風景となって不協和音を奏でていた。嵐の前の静けさというアレである。 そしてまた、その静けさは嵐によって吹き飛ばされるのである。空虚な時間は現実のどんな出来事によってでも、軽く夢世界のものになり得る。 俺は弁当を持って部室に向かった。心臓が知らぬ間に激しく鼓動していた。理由は解らん。 長門のクラスをのぞいてみたが、やはりというか、長門の姿は発見できなかった。 最初は歩いていたのがやがて早足になり、小走りになったところで部室に到着した。部室棟二階コンピ研の横、木製の扉。 そこで、地獄を見た。 * 俺は愕然とした。発する言葉もない。口をあんぐりと開けて首を回し、最後には頭を抱えて床に崩れ落ちた。 予感は当たった。当たってしまった。 ハルヒの精神が変わりつつあるという俺の憂鬱の発生源は瞬く間に消え去って、代わりに暗い未来予知が的中してしまった予言者のような沈黙が俺の心を支配した。 俺に否はないと断言できるが、それでどうしたという話である。現実は淡々と、ただし深く突き刺さる。 部室から、朝比奈さんのコスプレ一式がハンガーラックごと消え失せていた。 誰かが動かしたのだろうか。まとめてクリーニングに出したとしてもハンガーラックまでなくなることはないだろうし、俺はそんなのが楽観論にすぎないことを知っている。もしそのクリーニング説が本当だったのだとしたら、俺はそのクリーニングに出した奴をすぐさま訴えてやろう。精神衛生上よろしくないにも程があるぜ。 何をするともなしにゆらゆらと部屋の中を徘徊する。 ハードカバーがどっさり入っていたはずの本棚はがら空きである。遠い昔の記憶のような錯覚を受ける先週の金曜日、長門がいたときにやった七夕の竹だけはいまだに部室の窓にもたれかかっているが、長門と、そして朝比奈さんの願い事が書かれた短冊だけはなくなっていた。朝比奈さんが長門と同様の現象に見まわれたという証拠だった。 さらに、横の棚には急須がない。ポットだけはあるものの、よく見ると棚に乗っているのは茶葉ではなくてインスタントコーヒーである。普段は誰が淹れているのか知らんが、朝比奈製のお茶よりもおいしいようなことはないだろうね。ハルヒでも俺でも古泉でも、朝比奈さんのスキルはそう簡単に獲得できるものではない……。古泉? ハッとして振り向いた。そこには古泉が持ち込んだ古典的ボードゲームの数々が―― あった。 俺は深く息を吐いた。消えた長門の例からすると、そいつにまつわる物体がなくなっていると本人も消えているらしいから、古泉がこよなく愛するボードゲームがあるということは、古泉はまだ消えていない可能性が高い。 カチャリ。 突如、ドアノブを回す音がして部室の扉が開いた。 「やあどうも」 軽快を気取るような声をして入ってきたそいつには、いつものハンサムスマイルに少し苦笑が混じっている。すべてを知り合った仲間に自らの失態を告げるときのような、自嘲めいた微笑みである。 「よほどあなたに連絡を取ろうかと思っていましたよ。もうその必要もないでしょうが。さて、お気づきですか?」 ああ。嫌なことにたった今気づいてしまったところだ。 「ええ、そうです。とうとう二人だけになってしまいました」 その言葉はどう解釈すればいいんだろうかね。場合によっては殴るぜ。 「冗談です」 古泉は肩をすくめるお決まりのポーズを取り、団長机に置かれているデスクトップパソコンに歩み寄った。 俺は古泉にうさんくさい視線を投げかけながら、 「何が起こってるんだ。朝比奈さんもいなくなっちまったのか?」 「ええ、どうやらね。それに朝比奈さんだけではないようです。僕の組織が監視していた何人かの未来人が、今朝を持って一度にいなくなりました。ついでに橘京子の組織からも連絡を受けました。藤原という未来人もいなくなったらしいですよ。情報統合思念体製のインターフェースが消えたときとまったく同じ状態です」 しかしそこは未来人だから、未来に帰ったとかそういうことはないのかな。 「あなたは朝比奈さんから何を聞いたんでしょうか。時間平面がねじ曲がっていてTPDDの使用は不可能、と朝比奈さんは言っていたように思いますが。未来にも過去にも逃げることはできません。朝比奈さんも、まず間違いなく誰かに消されたんですよ。おそらく、周防九曜にね」 そんくらい俺も解ってる。 「じゃあ仮に犯人を九曜だとしても、あいつはいったい何を企んでるんだ。宇宙人を消し、未来人を消してさ。世界征服か?」 古泉はデスクトップパソコンを操作して立ち上げてから俺に目を戻すと、さあどうでしょうと首を傾げた。 「周防九曜が犯人であるということに異論はありませんが、目的がそんな単純なものだとは信じがたいですね。そうだったら、長門さんが以前やったように世界改変を行えばいいだけの話です。重ねて言いますけど、今回のこれは世界改変ではありませんよ。元の世界から宇宙人や未来人を引き抜いただけです」 じゃあ何のためにやったんだ。目的もなしに行動するような奴は少ないぜ。あいや、九曜ならその少ないの中に入るかもしれんが。 「目的は僕には解りませんね。涼宮さんに近づこうとしているのか、SOS団を崩壊させようとしているのか、あるいは邪魔者を排除してから何かをするつもりなのか。どちらにしろ、どうせ僕たちには対抗策などありません。長門さんや朝比奈さんを活殺自在にできるような存在にはね」 「お前にしては珍しく悲観的な意見だな」 「そうでしょうか。これも一種の作戦だと思いますけど。僕だったら無駄な対抗策を打って時間稼ぎをするよりも、残されたヒントを使って謎を解き明かし、新たな可能性を模索するほうを選択しますよ」 そう言って古泉がワイシャツのポケットから取り出したのは紛れもない喜緑メッセージである。生徒会議事録の最終ページで見つけたその文章には何かのパスワードが書かれているが、それはとうとう答えが解らなかったんじゃないのか? 土曜日に貸してやったのに解らないって言ってきやがったじゃねえか。 「そんなことはありません。この世にはね、深く考えてみれば解ける問題と絶対に解けない問題があるんですよ。たとえば宇宙の真理を一般人に答えろと言ってもまず無理でしょうが、この地球上で証明されている簡単な計算なら一般人でも……」 いいから解答が出たのか出ないのか答えやがれ。お前と話していると無駄な思考能力ばっかりついていって、肝心の答えが見つからないような気がしてならん。 「申し訳ありません。答えというか予測ですが、たぶん正しいというものなら出ましたよ。もちろん、このパスワードの在処がね。」 古泉が黙ってデスクトップパソコンを指さしているので、俺は近づいてのぞき込んでみた。 画面の真ん中にキテレツなマークがあって、ページにはメールアドレスとカウンタだけが取り付けられている。モニタが嫌々表示しているように見えるそれは、SOS団のサイトページだった。 「これか?」 と俺。 「そうです。ここのページは過去にも疑似情報操作のようなものを受けていますからね、もしやと思っていましたが、当たってしまいましたよ。長門さんが消される直前か消された後か、どちらにしろ仕掛けを作りやすかったんでしょう。ほら、カーソルをここに当てると」 古泉はカーソルをハルヒ作のSOS団エンブレムに乗せた。すると矢印のカーソルが手の形のカーソルに変わる。なんと、いつの間にかクリックできるようになっていた。ハルヒが俺にやらせずにこんな芸当ができるとは思いがたいし俺はこんな仕様にはしていないし、第三者の仕業で間違いない。 クリックすると案の定パスワード入力ページが現れた。password? と書かれているだけの、質素なページ。 「とまあ、この画面までは昨日までに『機関』のメンバーで考えて判明していたんですが。ただしこのパスワードというのがどうにも解らなくてね。このコピーには『password・すべての始まりを記せ』と書いてあるもので、ビッグバンやら宇宙やら、そのままこの文を入力してみたりもしたんですが、どれもダメでした。ちょっとこれは僕にはお手上げですね」 よくここまで辿り着いたもんだと感心していたが、それを聞いて呆れ返ったね。 すべての始まり? そんなもんは最初っから解っている。 それはビッグバンなんかじゃない。宇宙意識があったことでも、未来から人間がやってきたことでも、赤玉に変身する超能力者が現れたことでもない。少なくとも、俺にとってはな。 喜緑さんのこのメッセージは他の誰に宛てられたものではないのだ。生徒会長でも長門でも朝比奈さんでも古泉でもなく、そしてハルヒにでもない。俺が見つけたのだから、おそらく、俺が読むことを想定して書かれたものだ。 そうとなったら答えは一つである。すべての始まりは、こいつと出会ってからさ。 俺は古泉をどかしてキーボードに手を伸ばすと、その名前をタイプした。 つまり、『涼宮ハルヒ』と。 エンターキーを押すと、ロックが解除されたというメッセージが流れて別のページにジャンプした。 「ほう、さすがですねえ。なるほどあなたにとっての始まりは涼宮さんですか。なるほど、周防九曜や他の宇宙意識には抽象的で理解できない質問と解答です」 古泉がほざいているが、無視して液晶を食い入るように見つめる。ロードの時間がもどかしい。マウスを指でカチカチ叩く。とっととしろ。 出た。 『橘京子を連れてこの場所へ。わたしはここにいる』 それだけだった。ページのほとんどが白で埋め尽くされており、その真ん中あたりにかのような文字が活字体で羅列されていた。何だこれは。 わたしはここにいる。 ハルヒ(実際には俺)が四年前、東中のグラウンドにラインカーで白線引いて書いたアレだ。どっかの宇宙に宛てた奇妙な絵文字の意味がこれだったらしい。 俺は長く息を吐いた。間違いない。このメッセージは長門が作成したものだ。わたしはここにいる、と書かれていると教えてくれたのは他ならぬ長門だったのだ。 しかし、どういうことだ。 わたしはここにいる。 そして、橘京子。古泉とは異なる力を持つ超能力者。今回は共闘宣言をしてきたが、信用しきれない部分もある。そいつを連れてこの部室に来いと言うのか。意味が解らん。 もう少しヒントが欲しかった。そうでなけりゃ、パスワードなんかいちいちかける必要もなかろうに。スクロールしてみたが隠し文字はなかった。 「これだけですか?」 俺に訊くな。 「しかし、これだけでも取るべき行動の情報は得られましたね。長門さんらしいと言うべきか、最低限でも必要なことだけは明記してくれています。二文目はオマケのようなものですよ」 「橘京子をここに連れてくるってか」 あまり気分のいいことではなかった。当然気乗りもしないし、疑心暗鬼にさえ陥るかもしれない。 なにしろ、橘京子はついこの間まで敵対していたのだ。古泉の組織とは平行線で交わることはないなどと抜かしてやがったが、今になって急に考えを変えてきた。 しかし、さすがにほいほい信用できるものではないね。SOS団の命運がかかっているのだから、ついこの間までの敵を味方としてアジトに連れ込むのはどうかと思うぜ。 「あなたはそう言いますけど」 古泉が反論した。 「昔の立場関係というのは現在になってみればまったくどうでもいいことなんですよ。大切なのは現状です。特にこの場合はね。橘京子が味方になってくれる。客観事実だけを受け止めるのなら歓迎すべきことじゃないですか」 「確かにそうだけどな。けど俺が言いたいのはそこんとこじゃないんだ。土曜日に橘京子と会って話して、SOS団側につくって言われた。そんでもって今日はこのメッセージを見つけたんだ。橘京子を連れてこいってな。まるであいつが味方なのが前提みたいに書かれてるじゃないか」 「なるほど。それで」 言わなくても解るだろう。都合がよすぎるんだ。 古泉は数秒だけ首を捻っていたが、やがて微笑に戻るとどうでしょうねと言った。 「都合がいいのはあなたの仰るとおりですが、それはあくまで都合という観点で見たらの話です。あなたは、その都合というのは低確率が連続する問題だと信じているようですが、そうでなかったらどうでしょう。確率など関係なく、誰かの手によってそうなるように仕組まれていたとしたら」 「何が言いたい」 「これは僕の予想に過ぎませんが、橘京子の一派は何かをつかんでいると思うんですよ。もちろん彼女のつかんでいる情報はこちらには回ってきませんし、それはあくまで敵対組織同士だからです。ただ、彼女はそれをつかんだ上で合理的に行動している。SOS団に味方するというのも何か意味があるからです。おそらく、彼女はこのメッセージがなくとも、真相を知っていたんですよ。この事件を解決するためには自分の存在が必要不可欠だとね。たぶん土曜日、あなたと会って話す前から」 俺は土曜日の橘京子を思い出していた。 そういえば奴は佐々木に謝罪していたな。俺たちと会うために時間とルートを調整させてもらっていた、とか。さらにあの日の目的は俺たちに共闘を宣言することにあったといっても過言ではないだろう。 それもすべてを見越しての行動だったのか。ということは、あいつは長門がどんな目に遭っているかの詳細を知っていたということなのか。土曜日の時点で。 「いえ、これはあくまでも僕の推測に過ぎませんから。あまり深く考えないで下さいよ」 「そりゃいいが、どっちにしろやることは決まったな。橘京子に連絡を取るんだ」 「それが……」 古泉は困ったような顔になった。 「できないんですよ」 「…………何っ?」 できない。橘京子と連絡を取れないってのか。おいおい、どういうこった。 「彼女たちの組織に実体はありません。ですから正確に言えば組織ですらないんですけどね。いつも、ばらばらなんですよ。僕たちの『機関』に情報を提供してくれる場合でも匿名性のある手段しか使いませんからね。もちろん、自慢ではありませんが僕や『機関』は彼女の携帯電話の番号は知りませんし、どこに住んでいるかも知りません」 そんな……。じゃあ、あいつをメッセージ通りここに連れてくることなんか不可能じゃないか。 俺が顔面蒼白なのに比べ、古泉はずいぶんと落ち着き払っていた。おかしいくらいに。 「ですから、彼女たちからやって来るのを待つだけです。彼女は長門さんが作ったと思われるこのメッセージは知らないでしょうが、もっと核心に近いことをつかんでいるはずです。おそらく、土曜日にあなたの前に現れたように、何か必要があったらここにも現れるでしょう。自分が僕たちにとって必要不可欠の存在であるということも見通しているでしょうから。ただし、それがいつかは解りません。ですから、僕たちはひたすら待つわけです」 何をお前、そんなすがすがしい顔してやがる。いつかも解らねえ救助を待ってたら、大抵はのたれ死ぬぜ。そんなのは、白骨死体となって発見されたあまたの冒険者が証明してくれてるだろうが。それでもいいのかよ。俺は嫌だね。 「ふふ。どうしてだろう、不思議と怖くはないんですね。こういうスリルに憧れていたのかもしれません。――あなたは『二年間の休暇』を知っていますよね」 「いきなり何を言い出しやがる」 「本のタイトルですよ。『十五少年漂流記』とも呼ばれますが」 「それがどうかしたか?」 「分析してみると、僕の感情はあれに近いものなのかもしれないと思いましてね。彼らが辿り着いたのは孤島ですから、まっとうな手段では脱出不可能です。最終的には外部の人間に発見されて助けられるわけですが、僕のおかれた状況もちょうどそんな感じだと思ったんですよ。推察を巡らして手を尽くし、自分の力ではどうしようもないと悟ったとき、僕は、以前は、絶望するに違いないと思っていました。しかし意外でしたね。違いました。全然そんなことはない。むしろ気が晴れましたよ」 気でも狂ってるんじゃないかと言いかけてその言葉を呑み込んだ。マジで気が狂ってるんだろう。俺か古泉か、どっちかがな。 古泉はしばらく部室の窓の外を眺めていたが、やがて振り返ると真面目な表情に戻っていた。 「長門さんが突然消えて、その原因がはっきりしないまま朝比奈さんまで同様の現象に見まわれてしまったらしい。いや、宇宙人と未来人が、と言ったほうがいいでしょうね。そこまでいったら次に何がくるか、あなたなら解りますよね」 「超能力者か」 「あるいは、あなたです」 古泉のいつになく刺々しい声が冷酷に響いた。俺が目を逸らすと、古泉は真面目な話ですよと言った。 「土曜日にお話しした僕の最後の仮説――覚えてますね。僕たちは何者かに消されるのを待つ身なのかもしれない。それが、もしかすると真相なのかもしれません。時間の差はあっても、僕もあなたもやがては消されます」 古泉の複雑そうな横顔を、俺はぼーっと眺めていた。 超能力者が消えるなら橘京子も一緒に消されちまうんじゃないかと言おうかと思ったがやめた。そんな仮説に意味はないし、そういう仮定をする必要もない。古泉の言うとおり、橘京子が現れるのをただ待っているしかないのだ。先方が事情を承知しているなら、後は奴の慈悲深さに期待するだけである。しかしきっと、いるかも解らん神様よりはアテにできるだろうよ。いや微妙なところか。 「じゃあ」 俺がしばらくだんまりをやっていると、古泉がドアに向かって歩き出した。ドアノブに手をかける。 俺は咄嗟に口を開いた。 「古泉、てめえ明日もここにいろよ。消え失せたりするなよ」 一瞬古泉の手が静止したが、それでも特に答えることなく扉を開けて出ていった。その背中を見送って、しばらくSOS団サイトを表示しているパソコンを眺めていた。やがてチャイムが鳴ったので帰ろうかと思ったところで、弁当を食っていないのに気づいた。 * 「遅かったじゃないの。あんた昼休み中何やってたのよ」 授業開始直前にスライディングセーフを果たした俺は、特に何もすることなくそのまま五時限目六時限目をやり過ごした。もう少ししたら授業も夏休み前モードに切り替わって楽になるのだが、今のところは追い込み漁的な授業が続いていてちっとも心が安まらん。俺の場合、課外活動とその他の時間が一番疲れるのだから、授業中は睡眠学習を許可するよう教師も取りはからうべきである。 疲れという概念を本気で知らなさそうなのはハルヒくらいであって、俺の苦労も知らないハルヒの問いに、俺はだれた声で部室とだけ答えた。 「お前は何やってたんだ、昼休み中」 何となく訊いてみる。 「学食から帰ってきたら、ずっと窓の外眺めてたわ。気分で」 「何考えてたんだ。明日の天気か?」 「合宿のことよ。何して遊ぼっかなーと思って」 明日の天気と答えられても困るが、合宿のことと答えられても俺はなんだかため息を吐きたい気分だった。UFO召喚の儀式について、と答えられたら反応が違っていたかもしれない俺を一瞬思って、何を血迷っているのだと頭を振った。 「話は変わるけどさ」 俺はそう切り出し、 「去年の文化祭のときの映画撮影を覚えているよな。朝比奈さ……じゃない、どんな映画だったか言ってみてくれないか?」 「映画撮影?」 俺の予想が正しければ、ハルヒは間違ってもみくるちゃん主演の、とは言い出さないはずである。古泉の仮説通りなら、朝比奈さんはもとからこの世界にいなかったことになっているのだ。いないはずの人物が映画の主演をできるわけがない。というか、朝比奈さんがいなかったらハルヒは映画撮影なぞをやる気はなかったかもしれん。 やはり、ハルヒはいぶかしげな顔をした。 「何よそれ。そんなのはやった覚えがないわね。あ、でも面白そうじゃない。映画撮影かあ。なあにキョン、今年の文化祭か何かで映画を発表でもするつもりなの?」 「別に」 適当に受け流す。 どうやら古泉の仮説は正しかったらしい。朝比奈さんは長門と同じように消えちまっているという証明である。 俺は質問を変えた。 「じゃあ、SOS団の団員は最初っから三人だけだったかな。俺とお前と古泉。違うか?」 「何なのよ、キョン。そんな当たり前なことを訊いて。机の角に頭をぶつけて記憶喪失にでもなってるんじゃないの? あるいは頭がおかしくなってるのかしら」 ああ、その可能性は今回はまったく考慮してなかった。しかし古泉たちも記憶が俺と同じなのだから、黙殺でいいと思うね。 「なあハルヒ。俺さあ、金曜日の朝もこんなことを訊いてなかったっけ? あの時は長門有希って女子のことについてだった気がするが」 「どうだったかしらね。そうねえ……言われてみればそういう気がしないでもないけど……ところでキョンあんたいったい何なのよ。言いたいことがあるならはっきり言いなさい。遠回しな訊き方されるとすっごく気持ち悪いんだから」 一瞬、いっそのことすべてを率直にゲロってしまおうかと考えてから放棄し、ため息とともに何でもないと常套句を吐いて前に向き直った。 不意に、恐ろしいまでの虚無感が押し寄せてきた。感覚はそろそろ麻痺しちまっているが、時々、思い出し笑い並の唐突さでやってくるこれは吐き気を伴うまでになっている。 ホームルームが終わったら朝比奈さんと仲のいいはずだった鶴屋さんのところに行ってみようかとも思ったが、面倒になってやめた。 ホームルーム中、俺は机に伏せて微動だにしなかった。 * この日の放課後は特に何もなかった。 もっとも、長門や朝比奈さんがいなくなる以上に何かあってもらっては困るのだが。 この日は本当に、朝比奈さんがいないと部室で腹に入るものがとたんにまずくなることを実感したね。物理的にも、精神的にも。インスタントコーヒーだってたまにはいいだろうが、朝比奈さんのいないこのSOS団では、コーヒーは欲しかったら自分で淹れろという規律が存在しているようであり、自分で淹れたコーヒーを自分で飲んだところで味も素っ気もない。 無論そう感じるのは俺のコーヒースキルが劣っているからということにとどまらず、部室にいる人員にも問題があった。やっぱりこの部屋にいるのがハルヒと男二人だけってのは寂しいものなのだ。長門の読書姿でも、朝比奈さんのお茶汲み姿でも、それがSOS団の象徴になっていたということを改めて思い知らされた。 結局この日は喪失感が大きすぎて何もやる気がしなかった。古泉がヤケ気味に囲碁対戦を申し入れてきやがったが、今日ばかりは断らせてもらうぜ。 そんなこんなで、ハルヒはパソコンに向かっていたり雑誌を読んでいたりで、古泉は完全に持て余して詰め将棋状態、俺はパイプ椅子で半分以上茫然自失としているという、ある種異常とも言える本日の部活動は、うだうだの暑さが引いてきた頃に校内に響きわたったチャイムをもって終了した。 そうとなればもうこの部室にいるわけにもいかず、やがてして俺らは大量の生徒とともに校門から吐き出されることになった。俺はハルヒの後をセンサーで感知して動くロボットみたいに追い続ける。三人で、今の俺にとってはくそどうでもいいようなことを会話しながら、いつもの駅前に着くと、そこでまた明日と言って二人と別れた。 古泉もハルヒも、やがて街の雑踏の一部と化す。 * 家に戻った俺は、それでもまだ茫然としていた。ショックが大きすぎたのだろうか。 そんなのは言うまでもなく当たり前である。ただでさえ長門と朝比奈さんが消えてしまったショックはひどいのに、さらにこれ以上誰かを失う可能性が示唆されているというのだ。古泉はそう言っていたし、それは俺も納得せざるを得ない。明日仮に古泉が消えていたとしても、それはもはや、俺にとって驚愕すべき事態ではなくなっているのだ。 ではそうならないために俺は何ができるか。それはただ、待つことである。橘京子が助けに来るのを待つだけである。今日、それを自覚されられてしまった。 正直言って、俺は参っていた。 だだっ広い暗闇の中に置き去りにされて、それでも俺はそこから一つの希望を見いだした。その糸をたどっていって、ようやくはっきりした光明が差したのだ。SOS団のウェブページに現れた文章がそれである。橘京子を連れてこい。 それが俺たちの力では不可能だと悟ってしまった。橘京子の連絡先も所在も一切不明なのだ。どうしようもない。ただ俺たちは、橘京子が早く現れてくれることに運命を託したのだ。橘京子がライオンで俺たちは狙われたシマウマといったところか。別に橘京子が俺を殺そうと思っているわけではないだろうし立場関係的には間違っているだろうが、それでも活殺自在という根本において大差はない。手を下すのが自分か別の誰かかという違いがあるだけである。 だがシマウマというのは決して気分のいいものではない。俺は人間であるが故に知性というものに持ち合わせがあり、いいんだか悪いんだか知らないが、無抵抗に殺されるような真似はできるだけ回避するようにできちまっている。 そこで俺は思いついた。人智の発想さ。 誰か、橘京子の連絡先を知っていそうな奴はいないか、と。 思いついたね。そんときはおおいに笑みがこぼれた。 俺はそんなことを夕食を食べながら、風呂につかりながらずっと考え倒していた。おかげで、食事中はひたすら黙し続けて体調を心配されたり、風呂から出たときは全身がゆでダコのように真っ赤になっちまった。 風呂上がりですぐさまコードレスフォンを手にして自室にこもった。妹がふとどきにも俺の部屋でシャミセンと戯れてやがったがエサで釣って追い出してやった。たやすいもんだ。 電話は何回かコールした後、繋がった。 『もしもし』 「もしもし。ああ、俺だ」 とか言ってからナントカ詐欺を思い出したが、相手には無事に伝わったようだった。 『ああ、キョンか。こんな時間に、しかも僕に電話してくるとは珍しいね。何か急な用件でもあるのかな』 「まあな」 物わかりがよくて助かる。 俺が電話をかけたのは土曜日に再開を果たした人物の一人――つまり佐々木だった。 当然である。橘京子と俺の共通の知り合いで、しかも俺が絶対的な信用をおける奴など佐々木をおいて他にいないのだ。 「佐々木、お前にも用件の心当たりはあるだろ」 佐々木はしばし考えるふうな沈黙をおいて、 『そうだな、未来人が突如として消え去ってしまったことについて、かい? 橘さんから聞かされたよ。いやあ驚いたね。みんながみんなこういうののジャンルはファンタジーだと言うが、僕にしてみればホラー以外の何者でもない』 「ああそうだ。そのことについてだ。お前に訊きたいことがあってな」 『ほう、何だい。僕はそんな重要情報は持っていないと思うけどね』 それでも佐々木は好態度を示してくれるので俺は話しやすかった。こういうのがコミュニケーションスキルにおいて佐々木と他の連中との違いなんだろうね。 とはいえ、いくら佐々木でもパスワードの内容とか詳しいことまで喋るわけにはいかなかった。そこらへんは適当にごまかして、いろいろ手を尽くした末という表現に変換し、長門のものらしいメッセージを発見したこと、それによると長門を救うには橘京子が必要不可欠であるらしいことを話した。そして肝心の橘京子の連絡先を俺たちの誰もが知らないという、一見コメディである。 「ということでだ佐々木。率直に訊くがお前、橘京子の連絡先を知らないか?」 『それが用件というわけかい』 「その通りだ。知ってたら教えてくれ、頼む」 『いや、知らないんだ。お役に立てなくて申し訳ないが』 ちくしょう。 頼みの綱がまた一本切れた。残ったのはもはや、ただの恐怖でしかない。 「橘京子から教えられてないってのか」 『まあそういうことになるだろう』 「電話番号とかそういうのじゃなくていい。住所とか地名とか、名前でもいい。何か知らないのか?」 『申し訳ないが』 佐々木は同じ言葉を繰り返し、俺が黙り込んでいると電話の向こうで少し笑った。 『驚いたことに、僕から橘さんに連絡したことは一度もないんだ。さすがは橘さんと言うべきかな。味方にも連絡先を教えずに警戒するとは周到だよ』 暗い心のまま佐々木の言葉を聞いていたら何だか呆れてきた。 「お前は、そんな奴を信用してつるんでたのか。自分の連絡先も教えないようなヤツを」 『それはしょうがないことだ。誰にも、これは譲れないというものはあるからね。人はみんな、そういうことを承知した上で他人と付き合っている。承知できないか、承知できる範囲が狭い人間はどうしても他人と距離が開いてしまう。だから僕は橘さんのそういう考え方をできるだけ理解しようと努めているんだ。仲間としてね。キョン、たぶんそれはキミにも言えることなんじゃないかな』 俺は半分頭を素通りする情報を捉えようと電話機を握り直した。 「俺があの超能力者と一緒にされるのはあまり気分がいいもんじゃねえな」 『キョンが橘さんだと言っているわけではない。キミは橘さんの立場にも僕の立場にもなりうるだろうね。SOS団という団体の中で』 だったら俺は間違いなく佐々木よりのスタンスである。三者三様の理屈と考えを噛み砕いた上で俺の考えというものを構築していかねばならんのだから大変極まりない。さらに俺にはハルヒの理屈と考えまでもがのしかかるのだ。もちろんあいつにはあいつなりの理屈があってその上で理論ができているのだから、黙殺するわけにはいかない。 『だからさ、キョン。SOS団の人員と同じように橘さんにも事情がある。もちろん僕や僕の仲間の未来人、周防九曜さんにもね。個人の理屈や考えという観点から考えるのなら、彼女が連絡先を教えてくれないというのに許せないという感情を抱くのは彼女がかわいそうだ』 しかしそうは言ってもな、佐々木。事実は事実だし義務というものもある。俺にとって橘京子は信用をおけない存在で、SOS団のメンツは仲間なのだ。 『言っておくが、キミにとって橘さんは敵だろうが僕にとっては仲間だ。それに僕からすればキミたちの団体のメンバーは信用のおけない存在かもしれない。キョン、常に条件は対等なんだ』 俺がどう反論を試みようかと思っていると、佐々木は急に声を詰まらせた。次に発せられた声が涙声のように聞こえたのは、さすがに俺の耳がおかしいのだと思う。 『橘さんを信じてやって欲しい。これは橘さんの仲間であって、キミが信用してくれている僕からの願いだ。だからキミは今日、僕に電話をかけたんだろう。……頼むよ、彼女はきっとすぐに現れる。だから彼女を責めないでくれ』 「しかし……じゃあ、お前は完全に橘京子を信用してるんだな。すぐに現れると言い切れるんだな?」 『それは少々語弊があるけどもね。ここで人生論を持ち出すほど僕はえらい人間じゃないが、しかし僕には僕の人生があって、僕は仲間についていくことしかできない人間だ。彼女の思っていることを全部見通せる気はしない。だけれど、僕にはそう信じる義務があるのだと思うよ』 俺は嘆息した。これで俺は佐々木を信用する気になった。橘京子を頼る決心ができちまった。 それからしばらく、佐々木と人生論について語り合った後電話を切った。何となく、これから先も佐々木には到底かないそうにない気がしたね。あいつはとんでもない人間だ。 ついでに古泉にも電話してやろうかと思ったが、突如津波が押し寄せるように睡魔がやって来たのでやめた。携帯電話をしまってから部屋の電気を消すと、部屋には静寂がおとずれた。俺はだるい暑さに抱かれて暗い天井を見ながら、さっきの電話のことをしきりに考えていた。 人の事情を承知できる範囲が狭い奴は、どうしても他人と距離が開いちまう。 橘京子と連絡を取るのが不可能だと思い知った後しばらくして熱が冷めたら、その言葉だけがまだ、いやに熱を持ち続けていると気づいた。ハルヒのことが真っ先に頭に浮かぶのはどうしてだろうね。ハルヒにももちろん事情はあるのだ。あいつにはあいつなりの考えがあるし、それは常に変化している。一年前と同じことを考えているわけもない。どこぞのペットの猫よりも気まぐれに、妙な情にほだされることもある。それがいっそう俺をいらだたせるのだ。 考えるべきは消えてしまった長門と朝比奈さんの謎についてであるべきが、なぜかそのことに頭が取られているうちに眠りに落ちた。
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人類史上最強の暴君と言っても過言ではない涼宮ハルヒによって文芸部室に拉致られもうすぐ一週間が過ぎようとしている。 当初はどうしようもない程のやるせなさに襲われていたのだが、マイエンジェル朝比奈さんを拝むことが出来るから、と割り切って考えることにした。 と、まあそんな感じで現在も部室に絶賛滞在中の俺ではあるのだが、今日は朝比奈さんだけでなく長門までもが部室に訪れないという悲劇に見舞われた。 つまり暴君ハルヒと2人っきりの状況である。 こいつの内面を知らない男なら喜ぶべき状況だろうが、俺としては是非とも勘弁して貰いたい。そんな状況下で俺がハルヒの方をチラリと伺うと、やけにソワソワしているハルヒの姿が目に映った。 今更ながら、よくよく考えてみると昨日からあんな感じだったな。何を考えているかは知らんが厄介事を抱え込んでくるのだけは止めてもらいたい。 そんな想いに馳せながら観察していたのが悪かったのか、不意にハルヒと目が合ってしまうことになる。俺は突然のことに動揺し、視線を外しながら言い訳のように早口で告げた。 「今日は他の奴らは来ないみたいだし帰らせて貰っていいよな」 「あ……」 急いで荷物を纏め最後にハルヒに挨拶でもしようと振り返ったとき、ハルヒの右手に力強く握られているある存在に気が付いた。スッカラカンの頭をフル回転させて思考する。 ……もしかして……そうだ、確かにそう考えると納得が出来る。あいつの性格から考えてみてもな。 ここは俺から言ってやるか。いいことも思い付いたことだし。 「それ、お前の携帯か?」 「え、あ、うん………」 やけにしおらしい。不覚にも可愛いと思って…………………いや、冗談だ。 「偶然だが俺の携帯も同じ機種なんだ。ちょっとだけ見せて貰ってもいいか?」 これは本当である。偶然だと信じたい。 「別にいいけど……」 ハルヒから受け取った携帯を眺めてみる。俺のものとは違い傷一つ付いていなかった。 さて、ここから作戦開始だ。電話帳を開き新規作成を……………え…何だよ、これ………電話帳に、誰も………………ああ……………だから、か。 携帯に傷一つ入っていない原因。それはこいつが携帯を全く使ったことがないから。 こんな性格だ、きっと今まで誰にも訊くことが出来なかったはずだ。そしてその逆も然り。 ずっと寂しかったんだろうな、こいつは………。 俺の思考がその結論に至った瞬間、俺は素早く作戦を実行した。 「…………ちょっとキョン、いつまで人の携帯いじってるつもりなの!?早く返しなさいよ!!」 「分かったよ、ほれ」 「まったく、なにやって…………………………」 「すまん、勝手に登録させて貰った。俺が登録番号一番で不本意かも知れんがな」 「………バカッ!このバカッ、あんたは、本当に…………」 「嫌、だったか?嫌なら消して貰っても構わんが…………」 「ふ、ふん、もういいわよ。一度登録したものを消すのはあたしの主義じゃないから」 俺はそうかい、と言って笑った。それを見てハルヒは不機嫌な顔を作っていた。 …………だけどな、俺はちゃんと見たぜ。不機嫌な顔になる前に、お前が笑ったところをな。 その後、俺はハルヒと2人で下校した。ハルヒが俺の自転車の後ろに無理矢理乗ってきて大変だったな。 怒ろうかとも思ったが、太陽のような笑顔を見せてくれたらそんな気も無くしてしまったよ。 しかし疲労には勝てず、すっかり重くなってしまった足を引き摺って俺は我が家へ帰宅した。ふと携帯を見ると、見知らぬアドレスからメールが届いていることに気付いた。 『あんただけ勝手に登録させてんじゃないわよ!ぜーったい、あたしのも登録しときなさい!登録しないと死刑よ、死刑!! それから、ありがと』 まったく意地っ張りのあいつらしいメールだった。 ん、ちゃんと電話帳には登録したさ。だって死刑にはなりたくないだろ。 …………ああ、それから俺もハルヒのアドレスを登録番号一番にした。特に意味はないんだけどな。 終わり
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登録日:2009/08/17(月) 02 12 47 更新日:2024/01/29 Mon 16 07 43NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 09年冬アニメ youtube ぷよ まさかのゲーム化←しかし麻雀 アニメ オタク シュッパー ハルヒちゃん パロディ 京都アニメーション 公式 原作涙目 少年エース 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 涼宮ハルヒの憂鬱 漫画 無限ライオン 大人気ライトノベル『涼宮ハルヒの憂鬱』を元にした公式パロディギャグ漫画。 『少年エース』で2018年まで連載された。 原作:谷川流 漫画:ぷよ キャラクター原案:いとうのいぢ 単行本は全12巻。 【あらすじ】 ハルヒちゃんは今日も思い付きで行動を始めます。 果たしてキョンは彼女を止めるツッコミを出せるでしょうか……? ……と書いてみたが、基本原作のストーリーをギャグにしたり、オリジナルのギャグ話になるので、ストーリーはあまりない。 普通の漫画形式の他に4コマ漫画も混ざっており、4コマの場合は毎回コマの外にネタ的キャラ紹介が載っている。 たまにあるアクションシーンは無駄に大迫力。 あまりの迫力に『ぷよさんはアクション漫画の方が向いてるのでは……』という声もちらほら。 あと、キョンは既に3回ほど初夢を見ている(4回目は初夢はカット)など本編は一応時系列進んでいるのにサザエさん時空に突入している。 【登場キャラ】 ◆涼宮ハルヒ ご存知、天上天下唯我独尊の団長さま。 一応呼び名は『ハルヒ』だが、原作との区別で登場キャラ以外は彼女を『ハルヒちゃん』と呼称する。 原作よりさらに突拍子もない事を言い出し、皆を困らせたり怒らせたりしているが、一方で原作よりもSOS団員に振り回される描写が多い。 また、原作より制止は効きやすいとも。 ちなみに原作者によるとこっちのハルヒの方が原作よりハルヒっぽいとのこと。 ◆朝比奈みくる SOS団のマスコット。 原作よりメイドとしての使命感に燃えているが、ドジっ娘でよくコケる。 通販に弱く、胡散臭い高額商品も平気で購入する将来が心配な娘。 擬音が特徴的。 彼女曰わくメイドとは結果ではなく在り方らしい。 ◆長門有希 SOS団の無口キャラ。 性格はあまり変わらないが、こちらでは多彩な趣味を持つ“オタク”と化している。 部室では本ではなくパソコンを広げ、徹夜でPCゲームをし、アニメやラノベもチェックしている。 さらに「メイド(バニー)は素晴らしい」発言等々上げればキリがない。 もちろん、原作の無敵万能っぷりは健在。……だが、時折ボケる。 ◆古泉一樹 イケメン転校生。 特に原作と大差ない気がする。キョンとの信頼関係は強調されているが。 女子のサービスシーンの代わりを務めて、水浸しになったりボタンが飛んだりした。 たまに悪ノリする。 キョンとハルヒをからかってニヤニヤするのが最近のマイブーム。 5巻では主に新川さんに振り回された。 ◆キョン 一人でツッコミを担当する苦労人。一応主人公。 原作と同じく、大体被害が大きいのは彼か朝比奈さんである。 時々メタ発言をする。アニメでは完璧中の人なオタク。 4巻で森さんにポニーテールをお願いしたり、5巻でカチューシャを失くしたハルヒちゃんにポニーテールにしたらとアドバイスしたり、 ポニーテール萌えが悪化している。 なお、周囲からも主人公と認識されている。 ◆あちゃくらさん 長門に倒された朝倉さんが復活した姿。 デフォルメキャラ化してかなり小さいため、一人では外出も困難。 ちんまり容姿に目を付けた長門に連れられ長門家に住む事に。 長門家では家事を担当するお母さん的な役割。 そのせいか、5巻で幼児化した長門を殺すどころか可愛がっていた。 ◆キミドリさん 長門が風船に色々して誕生した黄緑色の犬型風船生命体。割りといい加減な性格。 あちゃくらさんと一緒に留守番する。 破れても死にはしない。 喜緑さんとは関係ない。 ◆鶴屋さん SOS団名誉顧問。 家が豪華で山やら神社やら何でも持っている。 困った時は鶴屋さんに頼めばなんとかなる。 バトル漫画染みた戦闘力を持ち、鶴屋山の食物連鎖の頂点に立つ。 ◆森さん 原作ではあまり出番は無いが、作者の趣味でこちらでは大活躍。 高い戦闘力を持ち、鶴屋さんとは良き好敵手関係にある。 メイドとしても超一流だが、彼女の技は常人ではマネ出来ない。 手加減が苦手、ドジっ子であるなど隙も多い。 4巻ではハルヒのの姿や北高制服ポニーテールを、5巻では貴重なナース姿を、6巻では幼稚園児コスを披露した。 ◆新川さん 大体森さんと一緒に現れる凄腕ドライバー。 最近巫女服を着た。 ヒゲ仮面。 そのドライビング振りは、基本機関関係のボケには動じない古泉すら、「いつか殺されそうだ」と怯えている。 そして、慰安旅行で不在の古泉に成り代わって、本物よりも周囲に親しまれたりもする。 『驚愕』以前だったので作者も知らなかったとはいえ、とんだ下剋上を仕込んでしまったものである。 ◆谷口 ハルヒちゃんの妄想により、ことある事に身体が変貌する可哀想な奴。 エヴァ初号機。 ◆国木田 目立たない事を除けば、あまり酷い目には会わない。 カッコいい時もある。あった。 6巻ではやたらと出番が多い。 女装が似合う。 ◆朝比奈さん(大) 未来の朝比奈さん。 原作の都合上出番が少なく、その事を根に持っている。 自分が目立つためなら過去の自分さえ踏み台にするお方。 必殺技は『みくるスリーパーホールド』。 ◆キョン妹 通称『妹ちゃん』 タックルに定評がある。 面白そうな事には兄を犠牲にしてでも首を突っ込もうとするアグレッシブシスター。 ◆シャミセン キョンの家にいる猫。 キョン妹の遊び相手として身を削る毎日。 ◆喜緑さん ほとんど出番はないが、時たま顔を出しては長門に『本来の任務はいいの?』と言ったりしている。 ただ催促するつもりはないようで、『問題ない』と言いつつ遊びに精を出す長門に何も言わずに笑うのがパターン。 水着の回にはしっかり水着姿を披露した。GJ! ◆佐々木 中学時代のキョンの親友。 7巻では嘘予告扱いだったが佐々木団ごと8巻より登場。 キョンとの関係設定は甘酸っぱいがお互い付き合ってる感覚は一切なかった。 ◆橘京子 設定的には『陰謀』後らしく、森さんにビビりまくり。 しかし後に弟子入りして機関にも入り浸っている。 その過程でその運営を無自覚に危機に陥れてる。 ◆周防九曜 長門以上に何も考えてなさそうな宇宙人。 黄緑さんの暗示で猫っぽいくにょんになって長門家の仲間入り。 ◆藤原 相変わらず上から目線でウザいが言うことがブーメランになってくる。 しれっと『驚愕』のネタバレもかました。 シスコン。 ◆渡橋泰水 SOS団の新入部員。9巻より登場。 みくるに愛でられている存在。 髪飾りをハメ直すとヤヴァイ。 ◆生徒会長 察しがいい。煙草も吸わない。 【その他】 ◆鬼口 ことある事に登場する谷口が鬼になった存在。 ◆急進派四天王 朝倉涼子他三名。さらにその上には三賢者が…… 犯人はヤス。 ◆メイドロワイヤル 長門がハマっているメイドもののギャルゲー。全年齢対象。 マンガ化、アニメ化、アンソロ、続編決定と大人気作品。 ◆無限ライオン 急須から生まれた、宇宙生命体。 ハルヒの力によって誕生。 ◆月面うさぎ ハルヒの力によって誕生。 強大な軍事力を持つ。 ◆リボルバー・オセロット スポーツ。誰がなんと言おうとスポーツ。 ◆ジャスミン 催眠術で猫と化したハルヒ。 みくるに愛でら(ry なお、この作品では『古泉の過去』『あちゃくらさんの危機』『無限ライオンとの別れ』という内容のシリアスな話がある………… …………というウソ予告が毎巻ラストに収録されている。 しかし、超限定版の3巻付録にて古泉一樹の現実が過去のものとならなかった。 アニメがYoutubeでにょろーん☆ちゅるやさんと共に配信されていた。 制作は原作と同じく京都アニメーション。 第1話~第3話はフルCGで制作されていたが、その後は普通のアニメーション制作となっている。 最近の京アニの特徴であるネタへの執着も相俟ってかなりカオスな作品に仕上がっている。一見の価値アリ。 だが一番カオスなのはOP。「いままでのあらすじ」は電波中の電波ソングである。 また25話の妄想OP『PC版? 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』は曲、キャラデザ、構成どれをとっても、その『PCゲームっぽさ』からある意味神OPといわれている。 とゆーか普通にやりたいわ! ハルヒをほとんど知らない人に「これが原作ゲームのOP」と言ったら騙せるレベルの神クオリティ。 だが、後の『エンドレスエイト』の布石とも言える暴挙も制作側がやらかしており、 第一話の配信予定日に「出来上がりませんでした」 とNice boat.映像を流して楽しみにしていたファンを絶望させている。 なんで、よりにもよってこんなネタを…… また、2011年にはなぜか『涼宮ハルヒちゃんの麻雀』という麻雀ゲーも発売された。 キャラゲー要素はまあまあだが麻雀要素は正直残念な出来。 しれっと森さんの中の人のほぼ最後の声優業だったり… 追記・修正よろしく(もちゃ)。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 作者自身は森さんが云々言ってるけど、多分一番好きなキャラは長門なんじゃなかろうか。 -- 名無しさん (2013-12-17 21 15 46) ハルヒのカチューシャは世界の王の -- 名無しさん (2014-02-24 11 35 09) ↑ミス、ハルヒのカチューシャは世界の王の証だったんだなww -- 名無しさん (2014-02-24 11 36 07) ↑×3 いや。多分妹ちゃんだ。 -- 名無しさん (2014-05-25 00 55 14) ↑少なくともキョンは大好きなんだと思う。扱いが良いか悪いかは別で。てか、あれも愛か。 -- 名無しさん (2014-08-30 19 25 14) ハルヒが猫になる回は話の発端からオチまで面白かった。 -- 名無しさん (2014-09-14 10 48 21) 牧羊犬が好き -- 名無しさん (2014-09-14 12 08 47) 幼女あちゃくらが好き -- 名無しさん (2014-09-29 06 11 47) 最初のミニキャラ化はもう無かった事に? -- 名無しさん (2014-12-28 22 24 17) 長門の感情表現が原作より豊かで微笑ましい(無表情だけど)。エンドレスエイトを「暇」と言い切ったりキョンに愚痴ったりする長門さんはこれくらいじゃなかろうか -- 名無しさん (2015-05-16 23 05 38) 最近はキョンとイイ感じの古泉が少なくて悲しい -- 名無しさん (2016-05-27 20 24 34) たまに一気に読み返すけど6,7巻だけ飛ばしてしまう -- 名無しさん (2016-09-17 00 21 02) 最近長門が一番長門っぽく歌ってる歌ってこれのOPとEDな気がしてならない -- 名無しさん (2018-06-21 21 00 26) 谷川先生は本編新作書く気ないなら登場人物のパーソナルデータくらいぷよさんに渡してあげるべきだと誕生日回読んで思った -- 名無しさん (2018-08-02 11 48 21) 名前 コメント
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涼宮ハルヒのMH ~プロローグ~ ~一章~
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・涼宮ハルヒの再会(1)
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「おかえりなさいませ、ご主人様」 夕焼けで学校が赤く染まる頃、学校にようやくたどり着いた俺を待っていたのは、変態野郎からの気色悪い発言だった。 あまりの不気味さに、俺はその言葉を発した古泉に銃を向けたぐらいだ。 古泉は困った顔を浮かべて両手をあげて、 「失礼しました。いろいろつらい目にあったようですから、癒しを提供して差し上げようかと思っただけです」 「癒されるどころか、殺意が生まれたぞ」 俺はあきれた口調で、銃をおろす。まあ、本気で撃つつもりもなかったけどな。どうせなら朝比奈さんを連れて……う。 あの後、俺たちは北山公園を南下して無人の光陽園学院に入ったが、敵に動きが悟られないように、 そのまま数時間そこで待機していた。もちろんハルヒには連絡を入れておいたが。 俺はしばらく学校内を見回していたが、古泉が勝手に解説を始める。 「北高の方はほとんど無傷ですね。敵歩兵の襲撃もありません。涼宮さんに作戦失敗を印象づけるには、 北山公園に僕らが入ったのと同時に学校を襲うのがもっとも効果的だと思いますが、 どうして敵はその手を使わなかったんでしょうか。僕が相手の立場なら必ずそのようにしますがね。 ま、大体察しはつきますが」 「しらねえし、今はそんなことを考える気分でもないな」 古泉を無視しつつ、俺は学校内を歩き回る。どこにいるんだ? ふと、俺の目に学校の隅に並べられている黒い物体が目に入った。見るのもいやになるその形状は、 明らかに死体袋だった。あの中に谷口も入れられているのだろうか。 「死者52名、負傷者13名。これが北山公園攻略作戦で出て犠牲です。 死者よりも負傷者が少ないという事態が、今の我々の力のなさの現われかもしれません」 やや声のトーンを起こした古泉が言う。俺の小隊も合計16人の命が失われた。 鶴屋さん小隊なんて生き残った方が少ないし、ハルヒや古泉の小隊の損害もかなりあるはずだ。 と、そこでスマイル野郎が重苦しくなった空気を変えるようにわざとらしくぽんと手を叩き、 「ああ、なるほど。涼宮さんを探しているのですね。それなら、前線基地に詰めていますから、学校にはいませんよ」 「なんだと?」 古泉に向けた俺の表情は、鏡がないんだから確認しようがないんだが、どうやら抗議めいたものだったらしい。 めずらしくあわてたように、 「いえいえ、僕はきちんと止めましたよ。いつもとは違い、かなり食い下がったつもりです。 涼宮さんと言い争い一歩手前までいくなんて初めてでしたからね。閉鎖空間が発生しないかヒヤヒヤものでした。 しかし、どうやってもあそこにいると言い張りまして。ああなったら、てこでも動かないことは あなたもよくご存じでしょう?」 しかし、何でまた前線基地にいるんだ? 敵の襲撃が予想されるのはわかるが、 総大将がいる必要もないだろうに。 「何となく予想がつきますけどね」 古泉はくくと苦笑し、 「涼宮さんはあなたの帰還を学校でただ待っているなんてしたくなかったんですよ。 ぼーっとしているといろいろ悪いことを考えたりしますからね。何かして気を紛らわせたかったんでしょう。 あとは……」 古泉がちらりと背後を見る。そこには朝比奈さんが相変わらずのナース姿でこちらに走ってきていた。 「鶴屋さんのことを直接言いたくなかったんではないでしょうか。これはあくまでも僕の推測ですけどね」 「キョンく~ん!」 息を切らせて走ってくる朝比奈さんに、俺は激しく逃げ出したい衝動に駆られた。こんな気分は初めてだ。 「よかった……無事だったんですね……!」 感激の涙を浮かべる朝比奈さんに、俺の心臓はきりきりと痛んでしまった。この後、確実に聞かれるんだ。 鶴屋さんのことについて。 「本当に心配したんですよぉ……。学校からはなにも見えなくて、どうなっているのか全然わかりませんでしたから」 「ええ、いろいろありましたが、無事に帰って来れてなによりです」 「あ、あと、鶴屋さんは?」 この言葉とともに、俺は心臓がつかみ出されたのではないかと言うぐらいの痛みが全身に走った。 だが、次に朝比奈さんが言った言葉は予想外のものだった。 「古泉くんから聞いたんですけど、鶴屋さん、足を怪我してどこかの民家に隠れているんですよね? あたしもう心配で心配で……」 俺ははっと古泉の方を振り返ると、ウインクで返してきた。この野郎、しっかりと朝比奈さんに事前に告げておいたのか。 変なところで気が利きやがる。でも助かった。そして、つらいことをいわせちまってすまねえ。 「鶴屋さんは無事ですよ。いつものまま元気です。ただ、ちょっと動くには厳しそうなんで、 ばかげたドンパチが収まるまで隠れていた方が良いと思います。幸い、隠れ家には食料もあるらしく、 3日間隠れるには十分だそうですよ」 「無線とかではなせないんですか? あたし、鶴屋さんの声が聞きたくて」 俺はぐっとうなりそうになったが、ぎりぎりで飲み込む。 「えーあー、無線ですか、あー無線なんですけど、なにぶん学校から離れたところにいる関係で、 あまり連絡できないんですよ。敵に――そう敵に傍受されて発信源を突き止められたらまずいですからね」 「そうなんですか……」 がっくりと肩を落とす朝比奈さん。すみません、本当にすみません……! でも、朝比奈さんはそんな俺の大嘘を信じてくれたのか、 「仕方がないですね。みんな大変なんですから、あたしばっかりわがままは言えませんし」 「3日経てば、また会えますよ。それまでがんばりましょう」 何とか乗り切れたか。こんな嘘は二度とつきたくねえ。 と、朝比奈さんはいつものかわいい癒しの笑顔を浮かべて、 「あ、そういえば、皆さんご飯まだなんじゃないですか? 長門さんがカレーを作ってくれたんです。 ぜひ食べに来てください」 神経が張りつめたままだったせいか気がつかなかった。学校中を覆うカレーのにおいに。 ◇◇◇◇ 「食べて」 食糧配給所になっていた教室で待ちかまえていたのは、迷彩服の上に割烹着を着込んだ長門だった。 これだけ見ると、あの正確無比な砲撃の指揮官とは思えない。ちなみに朝比奈さんは作業があると言って、 またぱたぱたとどこかへ行ってしまった。 「すまん、もらうぞ」 「いただきましょう」 俺は紙製の皿にのったカレーを受け取ると、がつがつとむさぼるように食いついた。 よくよく考えれば、15時間近くなにも食べていない。戦闘中は携帯していた水筒の水ぐらいしか口にできなかったからな。 「おいしいですよ、長門さん」 こんな時まで格好つけたように、優雅にカレーを食する古泉。全くどこまで行っても余裕な奴だぜ。 しかし、長門は大丈夫なのか? 相当疲労もたまっているはずだろ。 「問題ない。身体・精神ともに異常は発生していない」 そうか。それならいいんだが、あまり無理はするなよ。 「今のわたしにできるのはこのくらい。できることをやる。それだけ」 「でも、あきらめるのが少し早すぎるのではありませんか?」 背後から聞こえた最後の台詞は俺でもないし、古泉でもない。どこかで聞き覚えがあるようなと思って振り返ると、 「なぜ、ここにいる」 長門の声。トーンはいつもと変わらないが、内面からにじみ出ている感情は【驚】だとはっきりと見えた。 声の正体はあの喜緑さんだったからだ。生徒会の人間であり、また長門と同じく宇宙的超パワーによって作られた 対有機生命体インターフェース……で良かったんだよな? 北高のセーラー服を纏っているが、 やたらとそれが懐かしく見えるぜ。 「私の空間・存在把握能力で確認した限り、ここには存在していなかったはず」 「この固定空間での時間座標で10分ほど前にこちらに来ました」 ひょうひょうと喜緑さん。ちょっと待て、最初はいなくてさっき来たと言うことは…… 長門はカレーをすくってお玉から手を離し、喜緑さんの元に駆け寄る。 「この空間に干渉する方法を有していると判断した。すぐに提供してほしい」 「残念ながら、それは無理です」 「なぜ」 「外側から必死にアクセスを試みて、本当にミクロなレベルのバグを発見することができました。 ここにはそれを利用して侵入しましたが、現在は改修されています。同じ手で、ここから出ることはできません。 思った以上にこの世界を構築した者は動きが速いです」 喜緑さんの言葉に長門はがっくりと肩を落として――いや、実際には1ミリすら肩を動かしてもいないんだが、 俺にはそう感じた。 「不用意。打開のための機会を逃したのだから」 「すみません。外側から一体どんな世界になっていたのかわからなかったんです。 まさか、こんな得体の知れないものが構築されているとは思いもよりませんでした」 めずらしく非難めいたことを言う長門を、あの生徒会室で見せていたにこにこ顔で受け流す。 「しかし、一つの問題からこの世界に介入することが可能だったのは紛れもない事実です。 なら、まだ別の方法が残されていると思いませんか?」 「…………」 喜緑さんの反論じみた台詞に、長門はただ黙るだけだ。 どのくらいたっただろうか。俺のカレー皿が空になったが、空腹感が埋まるにはほど遠くおかわりがほしいものの、 なんだか気まずい雰囲気の中でそれもできずにどうしたものかと思案し始めたくらいで、 「わかった」 そう返事?を長門はした。さらに続ける。 「協力を要請する。この空間に関しての情報収集及び正常化を行いたいと考えている。 ただし、私一人では効率的とは言えない。状況は悪化の一途をたどっているため短時間で完了する必要がある」 「もちろんです。そのためにここに来たのですから。お互い、意志は別のところにありますが、 現在なすべき目的は一致しています。問題はありません」 なにやら交渉がまとまったらしい。二人は食糧配給所の教室から出て行こうとする。 おいおい、こっちの仕事はどうするんだ? 「するべきことができた。そちらを優先する。現在の仕事は別の人間に変わってもらう。問題ない」 「砲撃の指揮はどうするんだ?」 「そちらは続行する。今持っている情報を精査した中では、私がもっとも的確にそれが行えると判断しているから」 長門の言葉にほっと俺は胸をなで下ろす。あの正確無比な援護射撃がなくなったら、 正直この先やっていく自信もない。しかし、一方でこの非常識世界をぶっ壊してくれるならそうしてほしいとも思うが。 「どちらも行う。状況に応じて切り替えるつもり。その時に最も有効な手段をとる。どちらにしても」 長門は俺の方に振り返り、 「私はあなたを守る」 ◇◇◇◇ さて、なにやら長門が頼もしい事を言ってくれたし、 少しながらこのばかげた戦争状態から脱出できる希望が見えてきたわけだが、 どのみちもうしばらくは俺自身もがんばらなければならないことは確実だ。 そのためにはいろいろとやるべきこともあるだろうが、 「台車でカレーを運搬するのを護衛するのは何か違うんじゃないか?」 「いいじゃないですか。腹が減っては戦はできぬというでしょう。これも生き延びるためです」 俺の誰に言ったわけでもない愚痴を、古泉がいつものスマイル顔で勝手に返信してきた。 今俺たちは、学校から前線基地へ移動中だ。別に散歩しているわけではなく、 2台の台車に乗せたカレー満載な鍋とご飯の詰まった箱を載せて、それを護衛している。 まあ、ストレートに言うとハルヒたちに夕飯を届けている最中というわけだ。 しかし、武装した10人で護衛して運搬するカレーとは一体どれだけの価値があるんだ。 「美味しかったじゃないですか、長門さんのカレー。犠牲までは必要ありませんが、厳重・確実に 涼宮さんたちに届ける価値は十分にあると思いますよ」 「それに関しては別に否定しねえよ」 実際にうまかったしな。腹が減っているからという理由だけではないほどに美味だったぞ。 護衛を担当しているのは、俺と古泉、他北高生徒10名だ。とは言っても、俺と古泉の小隊の生徒はいない。 さすがに疲労の色も濃かったので、今の内に休ませている。国木田もだ。今ここにいるのは、 その辺りをほっつき歩いていた生徒をかき集めて編成している。だんだん気がついてきたが、 生徒一人一人の戦闘における能力は全く同じだ。身体能力も銃の扱いも。そのため、生徒を入れ替えても 大した違和感を感じない。 そんな中、俺と古泉はカレー護衛隊の一番後ろを務めていた。古泉がこの位置を勧めていたのだが、 どうせ何か話したいことがあるんだろ。 「せっかくですし、お話ししたいことがあるんですが」 「……俺にとって有益なら聞いてやる」 「有益ですよ。それも命に関わる話です。ただし、内容はいささか不愉快なものになるかもしれませんが」 気分を害するような話は有益とは言えないんじゃないか? まあ、そんなことはどうでもいいが。 古泉は俺が黙っているのを勝手にOKと解釈したのか、いつもの解説口調で語り始める。 「まず、率直にお伺いしますが、あなたが生き残って鶴屋さんが亡くなった。この違いはなぜ起こったと思いますか?」 「俺は腰を抜かしてとっとと逃げ帰った。鶴屋さんは勇敢に戦い続けた。それだけだろ」 「言葉としては同じですが、意味合いは違うと思いますね」 どういう意味だ。もったいぶらないでくれ。 「敵は最初からあなたと鶴屋さんが植物園まで撤退することを阻止しようとしていなかったんですよ。 だから、あなたは犠牲者は多数でましたが、意外とあっさり戻れています。 これは、敵の目的は涼宮さんに自らの決定した作戦でぼろぼろに逃げ帰ってくる生徒たちの姿を 見せつけようとしていたのではないでしょうか」 「おい待て、それだと鶴屋さんもとっとと逃げれば死ななかったって言う気かよ?」 「率直に言ってしまえば、その通りです」 なんだかむかっ腹が立ってきたぞ。おまえは鶴屋さんの命をかけてやったことを非難するつもりなのか? どうやら俺の内心ボイスが表情に浮かんできていたのか、古泉はあわてて、 「いえ、別に鶴屋さんの判断が間違いだったとは言っていません。逆に、敵から主導権を奪い去ったという点では、 これ以上ないほどの英断だったと思いますね。おかげで敵は一部の作戦を変更する必要までできた」 「公園南部を散らばった鶴屋さん小隊を追いかけ回す必要ができて、さらにロケット弾発射地点を守る必要ができた。 そのくらいなら俺にだってわかる」 「それだけではありません。敵は鶴屋さんを仕留める必要に迫られたんです。 必死にあなたたちを鶴屋さんと合流させなかったのはそれが理由だと考えていますね」 「何だと?」 「敵は涼宮さんに逆らう――そこまで行かなくても反抗する人物なんていないと踏んでいたのでしょう。 見たところ、ある程度は涼宮さんとその周辺の人物の下調べも行っているようですし。 ところが真っ先に鶴屋さんは涼宮さんの指示を拒否して、自らの意志で行動した。 これはこの状況を仕組んだ者にとって脅威であると映るはずです。明らかに予定外の人物ですからね。 だから、あの場で確実に抹殺する必要に迫られた。今後の予定に影響を及ぼさないためにも」 古泉の野郎の言うとおりだ。なんだかだんだん不愉快になってきた。有益な情報はまだか? 「今、これを仕組んだ者はこう考えているでしょう。何とか鶴屋さんは抹殺できた。 ところがどっこい、今度は別の人間が涼宮さんに反抗――それどころかある程度コントロールした。 ならば、次の標的は当然あなたですよ」 古泉の冷静な言葉に俺はぞっとする。突然、周辺の見る目が変わり、その辺りの物陰に敵が潜んでいて、 今にも俺を狙撃しようとしているんじゃないのかという不安が頭の中に埋まり始めた。 「ご安心ください。そんなにあっさりとあなたを仕留めるつもりはないと思いますよ。 なぜなら、あなたは涼宮さんにもっとも影響を与える人物です。敵も扱いは慎重になるでしょう。 下手に傷つけて一気に世界を再構築されたら、元も子もありませんからね」 古泉は俺に向けてウインクしてきやがった。気色悪い。 まあ、しかし、確かに有益な情報だったよ。敵が俺を第一目標としながら、早々に手を出せない状態らしいからな。 うまく利用できるかもしれん。珍しくグッドジョブだ古泉。 「僕はいつもそれなりに良い仕事をしているつもりですよ」 古泉の抗議じみた声を聞いた辺りで、ようやく前線基地の到着した。 ◇◇◇◇ なにやら前線基地ではあわただしいことをやってきた。窓を取り外したり、どこからか持ってきた鉄板を廊下などに 貼り付けている。ハルヒはここを要塞にでもするつもりか? そんな中、ハルヒはトランジスターメガホン片手に指示をとばしまくっていたが、 「くぉらあ! キョン!」 俺の姿を見たとたんに、飛び出してきた。やれやれ、どうしてこいつはこう元気なんだろうね。だが―― 「あんたね! 帰ったなら帰ったと一番にあたしに報告しなさいよ! いい? あたしは総大将にして総指揮官なの! 常に部下の状況を把握しておく必要があるってわけ! 今度報告を怠ったら懲罰房行きだからね!」 怒っているのに、顔は微妙に笑顔というハルヒらしさ満点だ、と普通の人なら思うだろ。 でもな、付き合いが長くなってくると微妙な違いに気づいちまったりするんだ、これが。 ハルヒは運んできた台車上のカレー鍋をのぞきこみ、 「なになに? カレー? すっごいじゃん、誰が作ったの?」 「長門だそうだ」 「へー、有希が作ってくれたんだ。じゃあ、みんなで遠慮なく食べましょう」 ハルヒは前線基地の建物に戻ると、 『はーい! よっく聞きなさい! 何とSOS団――じゃなくて、副指揮官である有希からカレーの差し入れよ! いったん作業を止めて休憩にしなさい!』 威勢の良い声が飛ぶと、腹を空かした生徒たちがぞろぞろとカレー鍋に集まり始めた。 ただ、その中にハルヒはいない。 「では、僕はいったん学校に戻りますね。あとはお願いします」 そう古泉は何か言いたげな表情だけを俺に投げつけて戻っていった。言いたいことがあるならはっきりと言えよ。 俺は前線基地とされている建物の中に入り、 「おいハルヒ。せっかくの差し入れなのに食わないのか?」 そう玄関口に寝っ転がっているハルヒに声をかける。 「あたしは最後で良いわ。あんなにいっぱいあるんだし、残ったのを独り占めするから。 その方がたくさん食べられそうだしね」 「そうかい」 俺はヘルメットを取り、ハルヒの横に座る。 じりじりと日が傾き、もう薄暗くなり始めていた。がやがやとカレー鍋に集まる生徒たちの声が建物内に響いているのに、 「静かだな……」 「そうね……」 俺とハルヒは共通の感想を持った。 「あんなにいた敵はどこに行っちゃったのかしら。てっきりすぐにまた攻撃して来ると思ったのにさ。 ちょっとひょうしぬけしちゃったわ」 「来ないに越したことはないだろ。まあ、そんなに甘くはないだろうけどな」 ――またしばらく沈黙―― 「大体、何で連絡くれなかったのよ。いろいろ考えちゃったじゃない」 「何だ、心配してくれたのか?」 「あったりまえでしょ! 部下の身を案じるのは上官なら当然よ、トーゼン!」 ――ここでまた会話がとぎれる。そして、もう日がほとんど降りてお互いの表情も見えなくなった頃―― 「ねえ……キョン……あ、あのさ……」 「なんだ?」 「その……」 「はっきり言えよ。どもるなんて珍しいな」 ――それからまた数分の沈黙。俺はただハルヒが話を再開するのを待ち続け―― 「その……鶴屋さんなんだけどさ。なんか……言ってなかった?」 「何かって何だよ?」 「……恨み言とか」 俺はハルヒに気づかれないように、視線だけ向けてみる。しかし、もう辺りは薄暗く、その表情は読み取れなかった。 「そんなこと言ってねえよ。また学校で会おうだってさ。いつもと同じだった――最期まで」 「そう……」 ハルヒが俺の言葉を信じたのか信じていないのかはわからなかった。ただ、明らかに落ち込んでいるのはわかった。 いつものダウナーな雰囲気どころではない。完膚無きまで叩きのめされているような感じだ。あのハルヒが。 それを認識したとたん、激怒な感情がわき上がる。額に手を当てて必死に我慢しないと、すぐに爆発しそうなほどだ。 あのハルヒをこんなになるまでめちゃくちゃにしやがった。絶対に許さねえ……! ~~その5へ~~
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俺はドアを開けた。 「ハルヒ…やっぱりここにいたか。」 「 」 思った通りだった。旧校舎の、俺たちの部室に、SOS団の部室に、こいつはいた。 「 」 窓のそばに立ち、外を眺める少女。 「…ハルヒ。」 呼びかけるが、こちらを振り向く気配はない。 「おい、ハル」 「何しに来た?」 …… 明らかな拒絶。 …覚悟はしてたさ。ハルヒが、覚醒を起こしてぶっ倒れちまった時点でなぁ。言わずもがな、こいつは… 俺の知ってる涼宮ハルヒではない。窓から立ち退き、振り向いたその顔は…無機質な表情そのもの。 記憶喪失にでも遭い、俺が誰だかわからない…そんな虚無感を覚えた。 「お前は…ハルヒじゃないな。」 「 」 『最初の宇宙は無限宇宙だった。この無限宇宙には初めは創造主である神しかいなかった。 始まりもなく終わりもなく、時も空間もなく、形も生命もなかった。このような全くの無の宇宙に 神は初めて有限を生み出した。神が自らを具現化した有限…我々はその存在を 各地の神話や伝説に照らし合わせ、【ソツクナング】と呼んでいる。』 長門の言葉を思い出す。 「これまで何度も世界を破壊し、そのたびに創造してきた張本人…そうだよな?神様…いや、」 …… 「ソツクナングと、そう呼んだ方がいいのか?」 「 」 …… 「 ソツクナング か 懐かしい名前 そうだとして、あなたはどうするつもり?」 「決まってんだろ…この世界の崩壊を…!第四世界の崩壊を今すぐ止めてくれ!!」 「できない相談だとわかっていて わざわざそれを口に?」 淡々とした 冷酷な口調。 …時計を眺める。 23時56分 時間がない…!こいつを説得してる時間など…もはやない…っ! 「…力づくでもお前を止める。」 …… 「まったく、呆れる 力でしか物事を解決できない それが人間 」 ッ!! 「お前に言われたかねえよ!!これからまさに【力】でもって世界を滅ぼそうとする… お前みたいな【邪神】にはな!!もはや神ですらねえ!!」 「 今更お前がこの人間の体をどうしようと 世界の崩壊は止まらない なぜなら、私自身 ここにはいないのだから 」 「何をワケわかんねえことを…ッ!」 …… 『あたしはあくまで神の化身でしかないの。確かに人間の身に投じてはいるけど、 だからといって本来の神が消えてしまったわけじゃない。本当の神はあたしとは別に 宇宙のどこかで存在してるわよ。で、その存在が地球規模の天変地異を引き起こしてるわけ。』 ハルヒが昔言っていた。 …こいつの言うとおりだ。神はここには…いない。 「ハルヒは…」 「 ?」 「ハルヒは…元のハルヒはどこに行った!!?」 そうだ…あいつは言っていたんだ…! 『世界が滅びるったって神はそれを傍観するだけ。でも、地上にいるあたしは知っている… それによって多くの尊い命が奪われ…また、彼らの悲鳴も聞こえた。考えようによっては単なる殺戮ね。 そして、その張本人が自身であることを自覚した直後、これまで何度あたしは発狂しそうになったことか。 人間である以上、最低限の理性はもつもの。…当然の帰結よ。』 『もうね…あたしはこれ以上人々の痛みは見たくない。』 「あいつはな…見たくなんかねえんだよッ!!この世界の人間が死ぬ様なんてな…、 お前の…その体の本来の持ち主である涼宮ハルヒはなぁ!!!」 「だから何?」 「あいつ自身そんなことは微塵も思っちゃいねえ…だから、言うぜ。今すぐ…今すぐ ハルヒの人格を呼び戻せ!!お前が今やろうとしてる暴挙に…あいつはきっと反対する!!」 「 ?呼び戻す必要性が感じられない 」 「そんなこともわかんねえのかよ!!?ハルヒは…元はと言えば涼宮ハルヒは お前の分身のような存在だったはずだ…俺が言いてえのは!!!仮にも分身だと言える そいつの声を… 一方的に封殺しちまってもいいのかって、俺は聞いてんだよッ!!!!」 「この人間のことなど知ったことではない」 躊躇うことなくこいつは言い放った。冷たかった。 『本来の神はとても考えが物質的で無機的で…そして冷酷。』 「そうかよ…じゃあ、この質問にだけは答えろよ…!!ハルヒをどこにやった!!?」 「別にどこにも ただ言えるのは 彼女がこの体に意識を宿すことは二度とないってこと 」 …… 今…何と言った? 「てめぇ…!!今の…冗談じゃ済まさねえぞ!!?」 「第三世界崩壊直後、私に牙をむき 本来担うはずの神としての業務を悉く放棄してきたこの人間を、 私は許さない 存在意義を絶ったこの人間を、私は許さない この人間の本来の人格には 消えてもらう」 「……ッ!」 俺はある種の恐怖を覚えた こいつは自分以外の存在を 単なる道具としか思っちゃいない …時計を見る。 23時58分を過ぎている… 時間が…ない!!! …ここまで真剣なのは俺の人生の中で…おそらく最初で最後だろう。思考回路が焼き切れるのではないか… そのくらい俺は真剣だった。真剣に考えていた。どうすれば世界が助かるかを。どうすれば…!? とりあえず落ち着く必要がある。さっきこいつが…ソツクナングが言っていたことを思い出せ… 『今更お前がこの人間の体をどうしようと、世界の崩壊は止まらない なぜなら私自身 ここにはいないのだから』 つまり、俺が今この場で側にある椅子を持ち上げ…ハルヒ(の姿をしたソツクナング)の頭めがけ、 殴りつけたとする。その場合、ハルヒは気絶、ないしは死に陥る。だが、そうしたところで… この世界の崩壊は止まらない。 …まあ、万一にもそれはありえん話だがな…。いくら意識が神に乗っ取られてようと、 この体が涼宮ハルヒ本人のものであることは…疑いようのない事実…!!気絶ならまだいい! 誤って殺したりでもしたら…ッ!一体どうすんだ!!?そんなことをしたらハルヒは永久に帰ってこない… そんなリスクを犯すはずがない…!! どちらにせよ事態の好転は望めない。 じゃあどうすんだ!? …てっとり早いのは、宇宙のどっかに存在する神に対し…直接干渉してやること。 …… 一人間である俺が どうやって?? …時計を見る --------------------------------------23時59分 ダメだ。俺は…このまま何もせずに終わるのか!?もう世界は…どうにもならねえのか!? みんな…ゴメン… …… 『…キョン君、僕は信じてますよ。必ず世界を救ってくれる…とね。』 『キョン君…!!どうか…無事帰ってきてくださいね!涼宮さんと一緒に!!』 『何があっても決してあきらめないで。あなたならきっとできる。』 !! 俺は…みんなと約束した。できるできないの問題じゃない!!やらなきゃいけない…!! 俺は…最後まで絶対あきらめない!!…落ち着け、落ち着いてもう一度冷静になって考えてみろ…ッ! …そもそもである。 『今更お前がこの人間の体をどうしようと、世界の崩壊は止まらない なぜなら私自身 ここにはいないのだから』 この言葉がどことなくひっかかるのは …俺の気のせいか? ハルヒの覚醒、即ちハルヒがハルヒでなくなったとき。それこそが世界崩壊へのカウントダウンだった。 裏を返せば、昨日ハルヒが倒れるまでの間、そのカウントダウンとやらは起きなかったということになる。 世界崩壊は誰の意志?誰の仕業?言うまでもなく、今目の前でハルヒを操っている神そのものだ。 つまり、神はハルヒの覚醒無しでは世界崩壊は成し得なかったはず。 …覚醒とは何だ?ハルヒはどうなった? 【前時代の記憶を取り戻す。】 これは俺のみにならず、長門や古泉たちとの共通認識でもあった。 だが…今のハルヒは違う。記憶が戻ったとか、そういう次元の問題ではない。 目の前のこのハルヒには【ハルヒ】としての意識がそもそも存在していない。自我が存在していない。 それもそのはず…神がそうするよう仕組んだからである。言わば、神の操り人形といったところか。 …俺たちの覚醒認識が間違っていたのか?だが、長門・古泉が主張していたあたり、安易にそうとも思えない。 1つ仮説を立ててみる。仮に、俺たちの認識は正しかったとする。 そうである場合、今のこの現状はどう説明すればいい? …思いつく答えは1つ。それは、記憶が戻った直後、神の介入により意識を絶たれたというもの。 第四世界崩壊のためには涼宮ハルヒの意識を奪い、神の監視下、コントロール下に置く必要があった。 …要約すればこういうことだろうか。 しかし、なぜそんなことをする必要が?正常状態のハルヒを放置しておくことで、神に何か不都合でも…? 「後 数秒で地球は公転周期上、完全にフォトンベルトに突入する これで第四世界も終わり 」 …数秒だと!?すぐさま腕時計を確認し…!?もう10秒もない…!! ッ!!! くそッ!!後もう少しで…後もう少しで何かわかりそうだったってのに!!! 9 …ッ!!俺はあきらめない…!!あきらめたら…何より朝比奈さんの死はどうなる!? 俺に言葉を託して死んだ朝比奈さんはどうなる!?これじゃ単なる無駄死にじゃないか!!! 8 『たぶ…ん、この世界は…守られる…第五…世界ももう…すぐ消滅…みん…ないなくな…る』 7 朝比奈さんは…あのとき何を根拠にこんなことを言っていたんだ…!?? あのとき…彼女は何を思ってこれを口にした?? 6 …俺は、あのとき覚悟を見せつけたじゃないか 5 【この朝比奈さんが…自分のいた世界を守るのに命懸けなのなら。俺だってそうだろう…!? 状況的には全く同じはずだろう!?俺は自分のいるこの世界を、人々を、家族を、友人を、 …ハルヒを!守りたい…!!!】 4 朝比奈さんが俺の覚悟を垣間見たのだとしたら…彼女は俺に一体何を期待した? 世界の人々?家族?友人?いや…違う 3 『キョン…君…、すずみ…やさ…んを…大…切に…ね』 2 彼女の最期の言葉が それを物語っていた 1 「 」 「 」 「!?」 「…何を し 計画 計画 が あ 、あああ !? ああああああああああああああああ!!!!!!」 12月2日0時0分 第四世界滅亡 その筋書きが破綻してしまったせいか -----------神は発狂し始めた …… 俺は今 一体何をしたのだろうか …反射だ 小学校、あるいは中学の理科の授業にて、こんな言葉を聞いた覚えはないだろうか? 特定の刺激に対して意識とは無関係に引き起こされる反応……生物学的反射の一般定義だ。 熱いヤカンに指が触れ、熱い!と感じた時には、すでに指は手元へと引っこんでいた。 わかりやすい反射の一例としては、例えばこういうものがある。 …厳密に言えば、今のは反射ではないのかもしれない。まあ、この際それはどうでもいい。 …… 机にもたれかかり、必死に倒れまいとするハルヒ。だが、それも時間の問題のように見えた。 それもそのはず…麻酔を叩きこまれて平然としてられる人間など、いるはずがない。 俺は涼宮ハルヒめがけ 麻酔銃をぶっ放していた 「意識 意識がぁ っ!」 ついに立っていられなくなったのか。床に塞ぎ込み、頭を抱えるハルヒ。 …麻酔銃?なぜ俺は、この局面でこれを使用したのか? …… …なるほど、 【正常状態のハルヒを放置しておくことで、神に何か不都合でも…?】 この問いに対する答えを、俺は知らぬ間に見つけてしまっていたらしい。…逆を考えてみればいい。 記憶を取り戻したということは、即ちその瞬間において、ハルヒが神と意識を共有することを意味する。 『だってあたしは神の分身だもの。つまり、神が考えてることが同時に今あたしが考えていること。』 本人の言葉通り、ハルヒはこれから神がしようとしていることを…瞬時に把握する。 神がこれからすることとは…言わずもがな、俺たちが生きるこの世界の破壊である。 …それを知ったハルヒはどうするだろうか? 『世界が滅びるったって神はそれを傍観するだけ。でも、地上にいるあたしは知っている… それによって多くの尊い命が奪われ…また、彼らの悲鳴も聞こえた。考えようによっては単なる殺戮ね。 そして、その張本人が自身であることを自覚した直後、これまで何度あたしは発狂しそうになったことか。』 『もうね…あたしはこれ以上人々の痛みは見たくない。』 極めつけは…第一、第二、第三、第四と史実に準え、次々に世界が滅んでいく様を… 見せつけられた一昨日の夢の中で…!消えゆく夢の中で、かすかに聞こえてきた、ハルヒの言葉…! 『嫌…っ!嫌!!あたしは…こんなことしたくない…!!!!』 もはや自明であろう。ハルヒが…決してこの状況を望んではいない、ということは。 話は次の段階へと進む。 望む望まないは別とし、ハルヒの中に何かしらの強固な意志が生まれた場合… 結果として【何】が起きる?…これが最も重要である。神はそれを恐れてる。 だからこそ、神は涼宮ハルヒの自由意思を阻害すべく、彼女を自らの監視下に置く必要があった。 以前、俺はハルヒに『神をやめて一人の少女、普通の人間として生きたいと思ったことはないのか?』 と提案したことがある。しかし、ハルヒはすぐには首を縦には振らなかった。その理由というのが 『化身である以上、これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。』 という思い込みにあった。自身が好きなように生きることを放棄した、ある種の諦観とも言うべきか。 その後の俺の説得により、ハルヒは立ち直った。これまでのステレオタイプから抜け出した。 結果、ハルヒは転生という手段に打って出る。代行者としての自分を捨て、来たる第四世界で 1人の人間として----------、自身の意志で生きていくために。 『やっぱり物事ってのはやってみるに越したことはないと思ったわ…あたしの潜在能力って案外凄かったみたい。』 …試みは見事に成功した。画期的とも言える瞬間だった。 つまり 涼 宮 ハ ル ヒ の 力 の み が 神 に 干 渉 で き る 唯 一 の 手 段 俺が言いたかったのはこの一点である。 ならば、ハルヒが記憶を取り戻した状態で、万が一にも神に対する強い反駁精神を発動させでもしたら 一体どうなるか?察しの通り、神は自らの計画に支障をきたすことを…覚悟せねばならぬ事態へと発展する。 仮にハルヒのそれが潜在的なものであったとしても、第四世界の崩壊にあたって全くのイレギュラー因子が 無いとは…言い切れない。神からすれば…これほど不気味な存在もいないだろう…? 言うことを聞いてくれない自身の分身など、脅威以外の何物でもないからだ。 言うのは二度目だが、ただの凡人である俺のような一人間には 宇宙のどこかに在する神に対し、どうこうしてやることなど…できるはずもない。 だが…ハルヒには…!涼宮ハルヒにはそれができる!! …… 『キョン…君…、すずみ…やさ…んを…大…切に…ね』 朝比奈さん…ありがとう。貴方が最期に言い残してくれた言葉のおかげで…、 俺は救われました。あの言葉の意味が…ようやくわかりましたよ。 …そうとわかれば話は早い。俺がやるべきこと…それは ハルヒが【ハルヒ】として自我を確立してられる環境を作ってやること…!! その一言に尽きる。残念ながら、現在目の前にて立ち塞がるハルヒは…ハルヒであって【ハルヒ】ではない。 神の息がかかった彼女を、一体どうすれば正常な状態に戻してやれるのか!?最大の難問だった。 『今更お前がこの人間の体をどうしようと 世界の崩壊は止まらない 』 こいつの言っていることは一理ある。 例えば、俺がハルヒに対し…素手や足で殴る蹴るなどし軽傷を負わせたとする。しかしそうしたところで… それはあくまで、言葉通り軽い傷でしかない。そんな程度の低いアクションを加えたところで ハルヒが神の監視下から逃れるとは…とても思えない。依然、意識は神に管轄されたままだろう…。 かと言って、重傷を負わせれば良いという問題でもない。それこそ暴論である…。 頭を殴りつけたり等して、万一ハルヒに永久に意識が戻らなかったらどうするつもりだ…!? 仮に戻ったところで、そんな重体な体で…どこに神に対し、憤る余裕があるというのか!?? 痛みが先行してそれどころではないのは…言うまでもないはずだ。 では、どうすればいいのか?神に憑依された表層意識を払拭するには… どうすればいいのか??単に、何か強い衝撃でも与え意識を失わせればいいのか?? …もちろん、暴力手段をもって身体に重傷を負わせる手法は…論外である。 …… 『麻酔銃…ですからね。人を殺すための道具ではないんですよ。そう言えば、わかりますよね?』 俺は賭けに出ることにした。 麻 酔 を も っ て 意 識 を 絶 つ 意識が揺らぐ一瞬の隙こそ、ハルヒが現状復帰できる最初にして最後の機会。俺はそう確信した。 …ああ、自分でもわかってるさ。これは賭けってレベルじゃねえ。 めちゃくちゃだ…大博打だ…それ以外に言いようがない。 …… あまりに不安要素が大きいのもわかってる。まず根本的な問題として麻酔ごときに、果たして神に隙が 生まれるのかどうか…?仮に生まれたとして、一瞬という僅かな時間でハルヒは意識を取り戻せるのか…?? 麻酔自体の効力もいまいちわからない。軽傷と同じ部類の衝撃性ならほとんど意味を成さない。 かと言って重傷すぎても困る。深い即効性の昏睡だと、いずれにしろハルヒは戻ってこれない。 だが、今はこれしか頼れる方法がなかった。何かもっと、他に確実性のある方法はないのか!? と、何度も何度も思案した。こんな危険な橋、誰が好き好んで渡るものか…ッ!! しかし…考えに考え抜いた挙句、どうしてもこれ以外には思い浮かばなかった。 だから…敢えて俺は信じたい。これが現状における最良の手段だったと。 俺は涼宮ハルヒめがけ、引き金をひいたんだ。 …そして、先ほどの冒頭に戻る。 「ぁあ くっ っ!」 今にも意識を失いそうな少女がいた。 …… 時刻は0時1分 窓から外を眺める。…さっきと何ら変わったところはない。 まだ油断はできない。だが、一つだけ言えることがある。それは 12月2日0時0分世界崩壊 回避した 12月2日0時0分世界崩壊 確かに…回避した…!!少なくとも、この時間帯における世界崩壊は免れた…!! これはつまり、神への干渉に成功したということ。もっと言えば、神に反駁すべく ハルヒの自我が表層意識に現れ始めたという証拠。 …俺の博打も捨てたもんじゃなかったらしい。 …… 古泉がくれたこの麻酔銃。結果として、俺は朝比奈さんは救えなかった。 だからこそ失敗は許されなかった…!!ハルヒだけは…なんとしても助けたかったから!! 「…、キョン…ッ」 …!? 急にハルヒの声色が変わった。…まさか 「ハルヒ…ハルヒなのか!!?」 すぐさま俺はハルヒの元へと近寄る。 「ふふっ…まさか、あんたが銃…それも麻酔銃なんてものを使うなんてね…、驚いちゃった。」 「ハルヒ!!お前…大丈夫か!?」 「…、大丈夫なわけないでしょ…!誰のせいで今体が…痺れてると思ってんの…!?」 そうだったな…すまん、ハルヒ。 「別に…落ち込まなくていいわよ。それしか…良い方法がなかっ…たんだろうし…。」 所々ハルヒの言葉が途切れているのがわかる。…これも麻酔のせいか。 「よく…戻ってこれたな…。」 「…え?」 「麻酔によるショックで神が動揺したのはほんの一瞬だったはず…その短時間で よく意識を取り戻せたなと言ってるんだ…。俺が麻酔という手段に訴えたことに お前が驚いてるように、俺も…お前の素早い復帰には心底驚いてるとこなんだ。」 「…別にそんなにおかしなことでもないわ。ただ、一瞬の隙さえあればあたしはよかった。 隙さえあれば、すぐにでも神と…取って代わるつもりだった…!」 「…??どういうことだ?お前…意識がなかったんじゃ…?」 「…それは違うわ。意識はあった。ただ…意識があっても、感情や仕草を表層に出すことが… できなかった。これほど歯痒い思いもなかった…!言わば、神に抑えつけられた状態ね… こればかりはあたしではどうすることも…できなかった。…操り人形のまま12月2日を迎えようとした時には… 正直もうダメだと思った…だから、必死に心の中で叫んでた…! 【キョン!!何ボサっとしてんの!?さっさとあたしを助けなさい!!】…ってね。」 「…まさか、お前があのときそんなことを思ってたとはな。俺は、その期待に応えることはできたか?」 「結果的にはね…さすがに、麻酔を使ってくるとは……思わなかったけど。」 「…そりゃそうだよな。」 「でも、おかげであたしは助かった…あんたの予想外の行動に、神は酷く動揺した…その隙をついて あたしは…神に、一気に反転攻勢をかけた…!それもあって神は…世界崩壊を、中断せざるをえなくなった…。」 …… 今更ながら驚く。 俺があのとき…世界を救うことで、頭を試行錯誤したり躍起になっていた中で…こいつはこいつで、 世界を救うことで必死だったんだ…!!確かに、そうでもなければ…麻酔をかけた直後に世界崩壊を 止めさせることなど、普通に考えればできるはずもない…ハルヒのとっさの反応があってこその芸当か。 …ハルヒには感謝せねばならない。 「…それで、全て思い出したのか?」 「…ええ、おかげ様でね…。あたしが神の代行者として日々奔走していたってことも…、 そして、第三世界の終わりで…あんたと出会ってたってこともね…。」 「…そうか。」 「まさか、またこうしてあんたと出会うときが来るなんてね… もっとも、あんたは第三世界でのことなんて…覚えてないでしょうけど…。」 「いや、しっかりと覚えてるぜハルヒ。」 「…どうして?転生した人間が前世の記憶を取り戻すなんてこと、あるわけ…」 「夢を見たんだよ…昨日な。船上でお前と…いろいろと話してた夢をな。お前は気付いてないのかもしれんが、 無意識の内に力を使って俺に過去の記憶を覗かせた…古泉や長門はそう分析してたぜ。俺もそう思ってる。」 「…変な話ね…だって、あんたってあたしと同じく転生してきたんだから…厳密に言えば異世界人的扱い… になるのよね?なら…そんなキョンにあたしが干渉することなんて…本来ならできるはずが…。」 …!! 確かに…ハルヒの言うとおりじゃないか??…じゃぁ、あの夢は一体?? 「…ふふっ、もしかしたら…あの世界のあんたが、それを知らせたのかもね…。」 「お…俺が!?そんなことが可能なのか??」 「…確かなとこはよくわかんないけどね…でもね、あたしはそう思うの。だって…そうでしょう? あんたの記憶は…キョンにしかわからないもの。キョンしか知らないんだもの…。」 …… 【お前】が…見せてくれたのか?世界の危機を察して…わざわざ俺に知らせに来てくれたってのか…? …夢から覚めた後、俺の問いかけに対し、長門・古泉は『ハルヒに異変はない。』と言っていた。 あれは…本当だったってわけか?俺の代わりにハルヒを守ってやれって、そういうことだったのか? 【お前】も姿が見えないってだけで…俺たちと一緒に、必死に戦ってくれてたのか…?実際のところはわからない。 …… 「…あたしね、ずっとキョンに会いたかった…だから…っ!もっと話したいけど 残念だけど、そうもいかないみたい…この世界を…なんとかしなくちゃ…ね。」 「俺も…また会えて嬉しい。過去の俺も、再会できてさぞかし喜んでると思う。 俺だって話したいのは山々…だが、まずはこの危機を乗り切らなくちゃな。」 そう、まだ終わっていない。 12月2日0時0分世界滅亡 確かにこれは回避した。だからといって、第四世界崩壊という筋書き自体が消えてしまったわけではない。 この回避はおそらく一時的なもの…12月2日0時0分という定刻が先延ばしされたにすぎない。 …当然だろう。地球崩壊を企む張本人が宇宙のどこかで、いまだその遂行に励んでいるのだから。 極論を言えば、あと数分で再び世界が消滅の危機にさらされる可能性だってある。 「…ハルヒ。次に地球がフォトンベルトに入る時間帯は…いつかわかるか??」 「…後、20分もしないうちに突入よ…。」 「20分だと!?」 どうやら、俺がさっき言ったことは極論ではなかったらしい。 「畜生…!一体どうすれば」 「キョン…あたしちょっと…やばい…かも」 「…ハルヒ!?どうした!?」 「麻酔が…まわって…きたみたい」 「ッ!!」 麻酔銃を使った代償が…ここにきて現れ始めた。そうなることは覚悟していたが…っ! 「ハルヒ!!お前の…お前のその願望実現の能力で…!その麻酔を取り除けないか…!?」 「…残念だけど…、それはできない…。」 「どうしてだ!?」 「確かに…、麻酔を強く拒否すれば…能力は発動…するでしょうね…でも、今はそんな些細なことに力を 削ぎたくはないわ…キョンも…わかってるんでしょ…?神に対抗できる唯一の手段が…あたしだけって…ことに」 「…!」 「それでも…万全な状態でも、あたしは神の力には遠く及ばない…はず。ましてや…神を倒すともなれば…」 「!?神を…倒すのか!?」 「だって、そうでしょう!!?じゃなきゃぁ、さっきと同じ…。 一時的に防いだところで、世界が危機に見舞われていることには…変わりないわッ!! なら、その根源である神そのものが消滅しない限り…世界は神の魔の手からは、永遠に逃れられない…!! だから…少しでも、少しでも力を温存しとかなくちゃならない…!そうじゃなきゃ、世界は…!!」 …… 俺から言うことは何もない… ハルヒの覚悟は本物だ…! 「…それで頑張ったとしてだな…!後どれくらいもちそうなんだ!?」 「わからない……、もって5分…ってとこかしら…、」 5分 …… 5分 胸に突き刺さる このわずかな時間の中で…ハルヒは神を倒さなくちゃならない。 止めるならまだしも…神を倒す!?神の存在そのものを…消す!?そんなこと… そんなことが本当にできるのか…!?そんなことが、本当に可能なのかっ!!? 「あたしは…神の消滅を強く願う…っ。強く願って…それを実現させる…! それが…あたしの能力だったものね…。あたしが…あたしがやらなくちゃ…っ」 俺は…何をやってるんだ…? 確かに、状況は絶望的だろう。だが…それでも尚あきらめず、神に立ち向かおうとしてる 当の本人を前に俺は… 一体何をやってる…?何を勝手に…沈んでる…? …最低だ。俺は。 …… 『だけどね、あくまであたしの体は人間。だから力的には 本体である神を超えることなんて絶対に不可能なの…当たり前だけど。』 『……』 『転生はできそうなの。でも完全には…いかないみたい、残念だけどね。 今あたしがもってる人間らしからぬ能力も…おそらく一部は受け継がれることになると思う。 それどころか神の操作で、今以上により強大になっている恐れだってある。』 『……』 『だから』 『言わんとしていることはわかるさ、そこまで俺も鈍くない。それでもし 何か悪いことが起こったって…そんときはその世界の俺がきっとハルヒを助けに来るはずだ… だからさ、お前は安心して転生に専念してりゃいいんだよ。』 『キョン…ありがとう。』 突然のフラッシュバック …… そうだ…俺はあのとき、昔ハルヒに言ったじゃねえか…!?助けてやるって!!!! あの世界の俺は…確かにそう言ったじゃねえか!!!? 「ハルヒ…!」 「…!?キョン…!?」 俺は…。座り込んでいるハルヒの手を…力強く握ってやった。 「ハルヒ、お前は…決して一人で戦ってるわけじゃない…!」 「…?」 「ハルヒ…実はな、さっきの麻酔銃は…古泉がくれたもんだったんだよ。」 「…古泉君が。」 「それとな…俺が今こうやって生きてるのも…長門と朝比奈さんのおかげなんだ。」 「…有希…みくるちゃん…。」 「みんなの力があって…今ここに俺とハルヒがいる。どうか…、それを忘れないでくれ!!」 「…!!」 「みんなここにいる…古泉、長門、朝比奈さん…みんな頑張ってる!!当たり前だろう!? SOS団は…いつも一緒だったじゃねえか!!それは…それは、団長だったお前が何より… 誰よりもそれを知っているはずだ!!!」 「キョン…っ」 「残念ながら一人間にすぎない俺には…こうやってお前の手を握っておくことくらいしか…できない。 …けどな、それで少しでもお前の気持ちが安らぐのなら…! 【SOS団みんながお前についてる。】、その証を少しでも感じ、不安が拭えてくれるのなら…! 俺も、お前の横で…必死に、必死に祈り続けてやる!!決してお前を一人にはさせねえ!!!!」 「キョン……ッ!!!」 …… 「そうね…あたしには…みんながいる…!!古泉君、有希、みくるちゃん…そしてキョン…!」 …… 「あたしね…正直言うと、半ばあきらめてたの…神なんかに勝てるわけない…ってね… でも…、あたしはキョンから勇気をもらった…!それだけで…それだけであたしは頑張れる…!! だから…あたしが意識を失わないよう…!強く、強く…!手を、握りしめていてね…。キョン…っ。」 「…ああ、もちろんだ。」 一体どれだけの時間が経過しただろう。 「キョン…」 「…何だ?」 「神の声が…聞こえなくなっ…たよ…」 「…俺はな、お前にならできると思ってた。」 「一体…、どれくらい…、時間…経った…かな?」 「…ちょうど5分ってとこだな。」 いまだにその5分というのが信じられん 俺には無限もの時間が去ってくような、そういう感覚に囚われていたんだ 「あたし…頑張っ…た…よね?」 「ああ、お前は十分に頑張ったさ…、よくここまで耐えたと思う。」 「…神の…声が…聞こえない…」 「…やったな…ハルヒ…ッ!!」 「声が…聞こえ…ない…」 神の化身である涼宮ハルヒには神の声が聞こえる 神が何を考えているかがわかる その声が----------------------------聞こえなくなった …… つまり、神は消滅した はっきり言おう。信じられない。わずか数分で…ハルヒは神を凌駕した。本当に凌駕してしまった。 予防線を張っておく あくまで可能性でしかない。神が本当に消えたかどうかなんて、一体誰がどうやって確認できる?? …… それでも俺は…ハルヒに対し、素直におめでとうと言いたかった。 死力を尽くした本人に…俺は誠意をもって労いの言葉をかけてやりたい。 「ハルヒ!おめで…」 …? 「ハル…ヒ?」 …いつからだろうか?ハルヒの体が…光っていた。 「ははっ…力を…使い果たしちゃった…みたい。」 …… デジャヴだった。この光景を…俺はどこかで見た。…そう、第三世界終焉時の夜。 海岸でハルヒと出会ったとき。あのときも彼女は…確か光り輝いていたんだ。 「転生のときと同じ…最後の灯火ってやつ?能力が無くなっちゃうときって、いつもこうなるのよ。 あのときもあたしは神に抗い、力を使い果たしたんだっけ…今のこの状況と全く同じね。」 …ハルヒのしゃべり方に、俺はどことなく違和感を覚えた。 「ハルヒ…お前、麻酔は…?」 「……」 …… 「状況は転生したときと全く同じ。つまり、これからあたしの記憶は永遠に失われる… だから、せめて最期くらいはあんたと、万全の状態で接しておきたかった…。 そう強く思ってたら…いつのまにか麻酔はとれてた。…そういうとこかしら。」 今、何と言った? 「ちょっと待て…記憶が失われるって…?どういうことだ!?」 「慌てないで。ただ、三日前のあたしに戻る…それだけの話よ。」 …… 「神に纏わる記憶が総じて消されるってことか…?」 「そういうことね。おそらく、明日にでもなれば…神だの第四世界だのそういうことを一切知らない、 ちょうど三日前の状態のあたしがいる…と思うわ。ただ、その明日が来ればの話だけど…。 本当に神が消えていれば…ね。」 「……」 ハルヒもハルヒで自覚していたらしい。神が消えたというのは…あくまで可能性でしかないということを。 …… 「…いずれにしろ、もう【お前】とは会えないってことか…?」 「ええ…残念だけど。でも、あたしはそれでいいと思う… 普通の、一人の少女として生きるのであれば、こんな記憶…邪魔以外の何物でもないもの。」 このハルヒとは二度と会えない …会えない …… なんだ?この喉につっかかる妙な感覚は…? …… 俺は…こいつに 何か言わなくちゃいけないことがあるんじゃなかったか…? ------------------------------------------------------------------------------ あれ…どうして俺は泣いてるんだ?確証はないが…遠い未来再びハルヒと会えるかもしれないじゃないか。 ああ、わかってはいるさ。会えるのは【未来の俺】であって今の俺じゃない。問題は会えるかどうかじゃない。 今の俺が…ハルヒに『この思い』を伝えられなかったこと…それが悔やんでも悔やみきれない。 そうか、だから俺は泣いているのか。ようやく理解した。 …… 「ハルヒ……ハル…ヒ………」 いくら叫んだってもう伝わりはしない。聞こえもしない。見ることも、触れることもできない。 …… 遠い未来の俺よ… 一つ頼みごとを聞いてはくれねえか。 もしお前がハルヒと出会うようなときが来れば… そんときは俺の代わりに『この思い』 ハルヒに伝えてはくれねえかな? 俺は第四世界の出発点とも言えるこの時代で精一杯生き抜いて…そして寿命を終える。 だから…遠い未来の俺よ、お前もお前でその時代を全うして生きろよな。 ハルヒと一緒に。 ------------------------------------------------------------------------------ そうだったよな?あのときの俺… 「ハルヒ…。お前に、伝えなくちゃいけないことがある。」 「…キョン?」 「今から言うことはな、あの世界の俺がお前に…言いそびれたことだよ…。」 「…?」 「でもな、それと同時に…それは、今の俺が思ってることでもある。…じゃあ、言うぞ。」 「俺は…お前のことが ……、大好きだ。」 「!!」 …… 「……」 「……、」 「……」 「……、、」 …ハルヒ? …… おい、どうしたハル …… 泣い…てる…? …… 「…まさか、最後の最後で、あんたの口からそんなこと言葉…聞くなんてね…。」 「……」 「最期にその言葉を聞けたあたしは…とても、幸せな【人間】だと思った…!」 「ハルヒ…。」 「キョン…覚えてる?第三世界での別れ際に…あたしが言ったことを。あのときも、あたしは幸せだと言った…、 でも…違うの…っ!あのときの『幸せ』とは…違う…!!本当に…嬉しいの…っ!」 …… 『【神の代行者】としての最期に、あなたのような人間に出会えてあたしは幸せだったわ…!』 …… 「ははっ…あたし、何泣いてんだろう…?また、ハルヒはキョンに会えるっていうのにね…」 「……」 「キョン…今の言葉、ハルヒにも…ちゃんと言いなさいよ…? あたしと…約束しなさい…!これは…団長命令……よ……、」 …そう言い残し、ハルヒは泣き崩れた。 「…団長命令に逆らう部員が 一体どこにいるってんだよ…?」 俺はハルヒを…強く、強く、抱きしめてやった。この華奢な体を…壊してしまうくらいに強く。 …不思議なことに、ハルヒは痛いとは言わなかった。…変な話だ。こんなにも強く抱きしめてるってのに…! 「キョン…あたしはあんたのことが…好きだった!大好きだった…!!」 「…そう言ってもらえて、あのときの俺も…さぞかし嬉しいだろうよ。」 「何…カッコつけてんのよ…?あんただって…嬉しいくせに…っ」 「…当たり前だろ。」 「……」 ずっとこうしていたい。俺とハルヒの間に…距離はなかった。 「…あたしね。」 ハルヒが口を開く。それは…独白ともいえる内容だった。 「…地球が誕生してから、やがて人類が生まれた…その人類を統括するための仲介者として あたしは生まれた…。やがて、人々はあたしを神と見なし、敬うようになった…。神は平和を望んだ、 だからあたしも平和を望んだ…けれど、それも長くは続かなかった…人間たちは互いを謗り合い、傷付け、 憎み…やがて戦争が起こった。神は怒った…結果、世界は滅ぼされた。けれど、そのときはまだあたしは 何も感じなかった…感情がなかったのね。けれど、しだいに人間や動物との交流が進んでいくうちに… そういう神の行いを、あたしは暴挙だと捉えるようになった。でも…それでもあたしは自分からは 動こうとはしなかった…神の仰せのままに従うのが、あたしの宿命だったから…、天命だったから…、 運命だったから…、そう強く あたしは信じていた…」 …… 「あんたがいなかったら…あたしって、一体どうなってたのかしら? いまだに神の代行とやらに追われ…日々奔走してたりしてね。」 「…そりゃなんとも、難儀な話だな。」 「あたしね、あんたと会えて本当によかったと思ってる。 だって、あんたがいなきゃ…今のあたしはいなかったんだもんね…。」 …… 「…時間…ね、」 「ついに…きたのか…。」 「ええ…あと1分もしないうちに、あたしの記憶は消されるわ。 神としての記憶も、滅んだ世界の記憶も、そして…昨日今日あった出来事も含めて全部…ね。」 「そうか…寂しくなるな。」 「何バカなこと言ってんのよ。ちゃんとハルヒは健在よ!」 「そんくらいわかってるぜ。」 「なら、紛らわしいこと言わないの。」 「……」 「な、何よ?」 「ハルヒ…」 …… 「今まで…ホント大変な人生だったろう…?よく、ここまで頑張ったな…。」 「……」 「でも、それも今日で終わりだ。次の朝からはお前は…今度こそ、本当の意味で 普通の人間としての生活を送れるようになる。その人生を…これまで苦労した分、どうか楽しんで生きてくれよ。」 「…もちろん、それはあんたがするのよね?」 「…?俺が…お前を楽しませるってことか…?」 「そゆこと。」 「まったく…お前には敵わんな。」 「当然よ!あたしを誰だと思ってんの!?」 「…団長様だろ。で、俺は雑用係りの平団員というわけだ。」 「わかってるのなら、それでいいわ!」 「どうか、ハルヒをよろしくね…っ」 直感で察した。たぶんこれが…このハルヒの最期の言葉なんだろうと。 …ハルヒは目を閉じたまま、顔をこちらに向けている。 彼女が何を言わんとしてるのか…俺にはすぐわかった。 「ハルヒ…また会おうな。」 そう言って俺はハルヒと…静かに口づけを交わした。 …… その瞬間だったろうか。辺りの光景が目まぐるしく変わりだした。 以前、ハルヒと二人 閉鎖空間に閉じ込められた時も…こんな感じだっただろうか。 閉鎖空間から出た後、俺たちはどうなってるだろう 世界は?天災は?神は? …… いつもと変わらない日常風景が広がる世界 凄惨かつ荒廃した光景が広がる世界 …俺たちが元の世界に戻った直後に目にする景色は、果たしてどちらか 前者であることを信じたい …俺は 意識を失った
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「あたしも、混ぜてよ。」 昼休み、部室で緊急会合を開いていた俺達の前に、ハルヒが現れた。 ハルヒの顔にいつもの無邪気な笑みは無く、静かに不敵な笑みを浮かべている。 おいおいハルヒ、それはどちらかというと古泉の笑い方だ。お前にそんな笑いは似合わねぇよ。 「いっつもそうやって、あたしを除け者にして面白いことしてたってワケね。」 「なんで朝比奈さんの未来を消した。」 「だって、未来があったらみくるちゃんいつか帰っちゃうじゃない。」 ハルヒはしれっと言ってのけた。そうだ、ハルヒは俺以外の三人の正体についても理解している。 朝比奈さんはいつか未来に帰ってしまうってことも。 でもだからってこれは……ねぇよ。 「涼宮さん、お願いします!未来を返してください!」 「ダーメよ。みくるちゃんは大事なSOS団のマスコットなんだから!未来に帰るなんて許さないわよ! でもみくるちゃんの未来人設定ってのはおいしいから、無くすのはもったいないじゃない? だから、帰る場所の方を消したのよ。」 「そんなの……そんなのあんまりですぅ!」 「嬉しくないの?これでもう未来に縛られることなく、ず~っとこの時代にいられるのよ?」 「涼宮さん、落ちついてください。向こうには朝比奈さんの両親もいるのです。 それを消してしまうのは、いささかやり過ぎかと。」 ハルヒと朝比奈さんの口論に古泉が割って入った。だがハルヒはまったく動じることは無い。 「そんなの関係ないわ。みくるちゃんの居場所はここしか無いはずよ。 あ、それと古泉くん、今までご苦労様。ずっとあたしのご機嫌取りしてくれてたんでしょ? でももうそんなことしなくていいわよ、あたしはもう閉鎖空間をコントロールできる。 自分のストレスぐらい自分で処理するわ。もうあたしのイエスマンを演じなくて済む。嬉しいでしょ?」 「……お言葉ですが涼宮さん、僕は別に自分を偽ってなど……」 「はいはいそれもあたしのご機嫌を取るための演技でしょ? ……有希もそうよね?あたしの監視のために仕方なくここにいるのよね。」 「違う。私がここにいるのは私自身の意思。」 「でもいいわ。いざとなったら全員留年させ……いえ、ずっと時間をループさせ続けるのもいいかもね! 去年の夏休みの時みたいに!我ながら名案だわ!そうすればずっとSOS団は不滅になるし!」 SOS団のメンバーに次々と絡んでいくハルヒを、俺は冷静な目で見ていた。 これでも一年間、ハルヒのことを見ていたんだ。 今ハルヒがどんなことを思っているか、なんとなくだが分かる。だから俺は言ってやるのさ。 「もう……無理すんな、ハルヒ。」 そうだ、コイツは明らかに無理している。そもそも古泉的な笑みをしている時点で気付くべきだったか。 もっともその笑みももう崩れかけているがな。 「……キョン?何言い出すのよ。あたしは別に無理なんか……」 そうは言っているが、ハルヒの笑みは更に崩れている。 お前に無理や我慢は向いてないんだよ。感情を100%表に出してこそのお前だろうが。 「ハルヒ、お前は自分の能力を知ってショックだったんだろ?今まで信じてたものが信じられなくなった。 下手したらSOS団のメンバーも偽りの仲間かもしれない。そう思った。 だから朝比奈さんを無理矢理繋ぎとめるような真似をしたり、 能力を持てて嬉しいんだと自分を偽っているんだ。違うか?」 「……ちが……」 「何が違うんだ?言ってみろ。 悪いが俺には攻める要素なんてまったくないぞ。俺はいたって普通の人間だからな。」 「……そうよ!その通りよ!悪い!?」 ハルヒが怒鳴った。ようやく、ハルヒらしい声が聞けたな。 「アンタに分かる!?自分がとんでもないことをしていたと気付いた時の気持ちが!! 自分の都合で8月を繰り返したり、自分の機嫌で変な空間を生んでたり! 1歩間違えればあたし世界を滅ぼしてたのよ!?」 大声で怒鳴りながらまくしたてるハルヒ。今まで我慢していたものが噴き出しているような感じだ。 「だから全てを知った時、あたしは真っ先に願ったわ!『こんな能力なくなりますように』って! でもそれだけは何度願っても叶わないのよ!こんな能力いらないのに!」 全ての感情を吐き出したハルヒは、その場に崩れ落ちてしまった。 床に水滴が落ちる。……泣いているのか。 「ハルヒ……」 今のコイツに、俺はなんて声をかけてやればいいのだろう。 俺が戸惑っていると、長門がハルヒの元へ歩みよった。 「有希……?」 ハルヒも顔をあげる。目元は真っ赤になっていた。 「あなたに、処置をほどこしたいと思う。」 「処置……?」 「そう。」 長門はハルヒの頭に手をかざした。 「あなたが昨日獲得した情報を、あなたの記憶から消去したいと思う。」 続く
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えー、臨時ニュースです。 つい先ほど、女子高生(16)が、男子高生(16)の自宅へ行ったようです。 くわし… 「何、ゴソゴソ言ってるのよ」 何でもないぞ、ハルヒ。 「そう」 …やれやれ、ハルヒは今、俺の家にいる。 何故、ここにいる理由は昨日に遡る。 放課後、ハルヒと一緒に部室へ行った。 ノックして入ることは、社会人としてのマナーである。 「はい、どうぞ」 この声は、朝比奈さん…では無く古泉だった。 ちくしょー、朝比奈さんの声が聞きたかったのに。 そう思いながらドアを上げた。 その瞬間、嫌な物を見てしまった。 俺は、慌てて、ドアを閉めた。 「どうしたのよ、中に入らないの?」 「ハルヒ、ここで待ってろ…いいな」 「…うん」 ん、あっさりと俺の命令を従うなんで…明日、何が起こりそうだな。 俺は、中に入ってドアを閉めた。 「古泉、一体、何をやってる」 古泉は、全裸のまま座っていた。 「気分ですよ、気分」 そこで、スマイルするな。気味悪い。 「気に入らないんですか」 「気に入る訳無いだろ、早く服を着ろ」 古泉は、マジックを取り出して、自分の股間に何が描いてる。 「ほら、象さんですよ、象さん、ゾーウさ~ん」 腰振るな、あと気持ち悪いもん見せるな。 「早く着ないと、警察呼ぶぞ」 「…分かりました」(´・ω・) 警察って強いな、変な事をしたら「警察」って言うだけで簡単に止められるとはね。 古泉が服着たのを確認して、ハルヒを中に入らせた。 何故か、少し怒ってたけどな。 「明日は、土曜日!不思議探しするわよ!」 元気いっぱい大声で言うなよ、耳が痛い。 「所で、キョン!明日9時にいつもの『あー、スマン…俺は無理だ』 ハルヒは俺に睨んだ。 「何でよ!」 「明日は、親の結婚記念日旅行なんで、妹の世話しなきゃいけないから、無理だ」 ちょとんとするハルヒ、そして笑顔になって言った。 「だったら、不思議探しをやめて、あんたの家へ行くわ!」 やめてくれ、来たら変な事をしそうだからな。 「ね、ね、いいでしょ?みくるちゃん、古泉君、有希」 おぃ、こいつ等も行くのかよ 「僕は用事ありますから、無理ですね」 「私は…その、鶴屋さんに…」 「…私は無理」 ちょっと待ってくれ、ハルヒだけが行くのか? 「そりゃそうですよ」 古泉の自慢のスマイルをして言った。 ハルヒを止める役いないのか? 「えぇ、いませんよ」 は、計ったな!古泉ぃぃぃぃぃぃぃ…。 「と言う事で、解散!」 さて、明日ハルヒが来る訳だが…。 アレを隠さないとヤバイな、色々細工しておかないとな。 「…はぁ、やれやれ…」 アレとは、男なら分かるでしょ? 翌日、俺はアレを細工完了して休んだ所に電話が鳴った。 あぁ、多分…ハルヒだろうなと思いながら出た。 「もしもし」 「あ、キョン!今から出るから!」 と言う事は、ハルヒは今、自宅に居る訳が…時間は十分あるな。 「分かった、じゃあな」 「うん」 切った所で、チャイムが鳴った。 ピンポーン… おや、誰だろうな。 「はい、どちら様…」 俺は、固まってしまった…30秒ぐらいな。 だって、目の前に息が荒いハルヒがいるんだぜ。 「えー…さっき電話出たんだよな?」 「ハァ、ハァ…う、うん…」 「ここまで1時間掛かるよな?」 「ハァ、ハァ…そ、それがどうし…たの!」 「何で、1時間経ってないのに…どうやって?」 「フゥゥ…走って来たのよ!」 走って来ただと!?プロも吃驚する速さだなぁ、おい! 新幹線の「のぞみ」と勝負したらハルヒが勝つだろうな。 ハルヒの記録タイム 00 01 030 「なぁ、ハルヒ」 「何よ」 「さっきから思うけどな」 「ん」 「何だこの大荷物は」 よく見れば、リュックとパック2個に学校の鞄…。 泊める気マンマンだな、おぃ。 「泊まるんだから、いいでしょ」 ここで拒否したら、古泉に怒られるな。 「分かった分かった、泊めてやるよ」 「あー、ハルにゃんだ!」 妹よ、廊下で走ったら危ないと何度言ったはずだが。 「えー、知らなーい」 誤魔化しやがって…。 「おはよ、妹ちゃん」 「うん、おはよー!ハルにゃん!」 思い出したけど、俺に挨拶無しか、二人共。 「さて、朝食作ろっか、もうすぐ正午になるけどね」 時計を確認すると、11時30分か…30分後になると正午だな。 「わーぃ、ハルにゃんの料理!ハルにゃんの料理」 「ふふふ、期待しててね、妹ちゃん」 「うん」 …何で言うか、微笑ましい光景だな。 さて、俺はのんびりしとくかな。 テレビを観ながらキッチンで何か騒いでる 「あー、それどうやるのかな」 「何これ!変なの入ってるーっ!」 「うわっ!ゴキブリだぁ!」 「あっち行け!あっち行け!」 「いやぁぁぁ…助けてー!」 ハルヒの弱点を知ってしまったな。 「ハルにゃんが、助けを求めてるよ」 やれやれ…どうやら、俺の出番らしいな。 俺は古新聞を取り出して、キッチンへ行きゴキブリを叩きゴミ箱に捨てた。 「うぅぅ…」 泣きそうになってるハルヒは可愛いな。 理性が暴走しそう…ってイカンイカン! ここは、我慢しないと。 「大丈夫か」 「…うん」 ハルヒは俯いたまま答えた。 「早く、料理作ってくれよ」 俺は、キッチンから出ようとした時、袖に弱く掴んだのはハルヒだった。 「…何だ」 ハルヒは俯いたまま言った。 「もう…少しいて、ゴキブリが怖いから」 くそ、可愛いじゃねぇか。 しょうがない…側にいる事にしよう。 今、ハルヒと妹と一緒に昼飯食ってる訳だが…。 まぁ、何だ、その…疲れてるのかな。 「なぁ、ハルヒ」 「何、キョン?食べないの」 「いや、食べるけどな」 「じゃ、何よ」 この際、ツッコミしようか。 「どうやったら、こんな量を作れるんだ」 パーティでも開いてるのかと思うぐらい多人数で食べる量だぞ。 「あ、ゴメン…張り切って沢山作っちゃって」 ハルヒは、頬を赤らめながら俯いた。 俺の家で料理を作るから嬉しいのか。 …明日でも長門に呼ぼうかな…。 「…誰か私を呼んでる!?」 午後は、ハルヒと格闘ゲームで遊んだ(勝ったのは俺だが、20回付き合わされた) 色々あったが、言う必要は無いな。 と言う訳で、夜になった。 「なぁ、ハルヒ」 「何?」 ハルヒは、俺の部屋で寛いでいる。 少しは気まずいとか思わないのかね。 「夜食は外で食べに行かないか」 親はいないから、外で食べたいからな。 「うーん、金はどうするの」 勿論、俺は金持ってるからな。 「俺が奢ってやるさ」 「うん、そうしましょ!」 ハルヒは、自分の荷物を置いた場所へ行った。 そうだ、妹も誘うか。 確か、リビングにいるっけな。 「おーぃ、妹よ…いるかー?」 ………… あれ?返事が無いな。 ふと、テーブルの所に見ると一枚の紙が落ちてた。 それを拾って見たのだが、次のように書かれてあった。 「キョンくんへ 私は、有希ちゃんの家へ食べに行くよ ハルにゃんと二人で行ってね! いもうとより」 逃げたな、妹よ。 …もしかして、気を使ってくれたとか? いや、まさかな…。 「行くよー!」 ハルヒは、着替えを済ませ玄関に居た。 着替えるの早いな。 ま、仕方ない、行くか。 坂道を下って歩いてる訳だが、これはどう見てもカップルに見えるんだよな。 夜だから、少し助かったけどな。昼間だったら、誰がに見られるから恥ずかしいぞ。 「ねぇ、キョン」 ハルヒの顔は暗くて見えないか、赤くなってるだろうと想像しておこう。 「何だ」 「今日…何の日か知ってる?」 はて、何だっけ。 「あぁ、キョンは知らないっけ…今日、あたしの誕生日なの」 へぇ、初耳だな。 あ、プレゼント買ってないな。 「ハルヒ、スマン…プレゼント買ってない」 とにかく謝っとく事にした。 「いいの、言うのを遅かっただけだから…外食するだけで十分よ!」 ハルヒは、いつものの笑顔で許した。 それにしても、今日はハルヒの誕生日だったとはね。 まぁ、ラーメンにしようかと思ったが…予定を変更しよう。 確か、いい店あったはず、思い出せ俺よ!思い出すんだ! ん、そういえば…確か、谷口が言ってたな。 『図書館の近くに新しく出来たレストランがあってな、あそこはおいしいらしいぞ! しかも、金は少し軽いと聞いた』 よし、あそこしかないな、谷口って、たまには役立つな…。 谷口、感謝してるぞ。 「ハルヒ、いい所へ連れて行ってやるぞ」 「へ、どこへ」 「レストランさ!」 で、着いた訳だが…。 信じられない光景を見てしまったような気分になった。 何でかと言うと、凄い豪華なレストランだな、おぃ。 俺もハルヒも呆然してしまった。 「ね、ねぇ…ここで食べるの?」 仕方ないだろ、だってお前の誕生日なんだからな。 「あぁ、そうだよ」 「で、でも…ここは…」 あぁ、じれったいな。 ここは、勇気のある人ならダン!と入るだろうに。 「行くぞ、ここにいても仕方ないだろ」 俺は、ハルヒの背中を押して無理矢理、中に入らせた。 中に入ると、店員さんが暖かく迎えてくれて座る所を誘導してもらった。 中の雰囲気は、イタリアの建物に近かった。 「い、いいの?金、困らないの?」 凄く困ってるハルヒって初めて見るな。 配ってくれたメニューを見たが、ふむ、大ダメージじゃないな中ダメージ と言っていいだろう。 「構わんさ、好きなように選べ」 「う、うん…えーと…」 あぁ、こりゃ時間掛かるな。 えーと、コースにすればいいかな。 少し安いしな。 「ハルヒ、コースしないか」 「えっ!そ、そうね…任せるわ」 ふふ、ハルヒは驚いてるな。 まぁ、いいさ…何だって、ハルヒの誕生日だからな。 …ツケは、古泉に任せるか。 「ハッ!何ですか!嫌な予感がします!マッガーレ!」 どうしたものかな、食事取ってる間は全然、会話無し。 何が話題を出さないと。 「あぁ、これ、おいしいな!」 「…え?あ、おいしいよね」 気付くのが遅いな、いつもののハルヒじゃない。 「ハルヒ、どうした」 「え…な、何でもないよ!うん、何でもないっ!」 慌てて否定する事は無いのにな。 それにしても、さっきと違い様子がおかしいぞ。 態度をゴロゴロ変わってるけど…疲れないのか。 「ハルヒ、大丈夫か」 「うくっ!」 うくっ? …まさか…。 「うーっ、うーっ!」 喉詰まったのかよ! 取りあえず、コップ!コップ! 「ほれ、水だぞ」 コップを渡す瞬間。 ハルヒは、素早くコップを受け取って飲んだ。 「ふぅ…死ぬかと思ったぁ…」 「大丈夫か」 「え、う、うん…」 何だ、いきなり俯いたぞ。 メランコリーになった訳では無いようだが、一体何なんだよ。 ハルヒ サイド あー…危なかったぁ、コップが無ければ死ぬところだったわね。 こんな所で、二人でご飯食べるなんで、恥ずかしいし…緊張するわね。 改めて、キョンの顔見たけど…優しい目してるなぁ。 今日はキョンと楽しく過ごしたいのに、何やってんだろうなぁ、あたしって…。 もっと頑張って、楽しくしたいのに…何も出来てない。 キョンが心配してるような目してるよ、やっぱダメだったかな。 「ハルヒ、何かあったが知らないが…今は楽しい時間だから、何か話そうぜ」 キョンの暖かい言葉で動揺してしまうなぁ。 「わ、分かってるわ!さ、食べましょ!」 「ん、そうだな」 うわ、何言ってるんだろう…あたしは…本当は「そうよね、何か話題無いかしら」と言いたいはずなのに… 何て事を言ってるの!バカハルヒ! わっ!また態度が表に…あ、キョンが面白そうだなと思ってるような顔してる!? うぅっ、昨日のせいよ!昨日の!寝る前にテレビ観てたら、甘ったるい恋愛映画を観たせいよ! あ、キョンから、おーぃ大丈夫かー?と言う念から来るわ!耐えるのよ!耐えて! えー…そうだ!話題!話題!話題無いの! 「ねぇ!キョン!妹ちゃんはどうしてるのかな!」 アーッ!しまった…これじゃない、違うわ…。 で、キョンはこう答えた。 「んー、そうだな…長門のマンションで何かやってるだろうな」 そ、そう…どうでもいいですけど…。 「んじゃ、出るか」 え?今、何で? 「もぅ飯食ったし、支払って出るぞ」 ちょ…待っ、ここで話がしたいんですけど…。 と言う事なく、キョンの言う通りに出る事にした…。 全ては、みくるちゃんのせいよ! 「くしゅん!な、なんですかぁ~」 キョン サイド 何故か、ハルヒが悔しそうに物に当たってるんだが…。 何があったと言うんだ。罰当たるぞ。 「なぁ、どうしたんだよ…さっきからおかしいぞ」 と言ったら、ハルヒはこっちへ睨んで来た。こっち見んな! 「何でもないです!」 何故に敬語!? 「…言ってみたかっただけよ!」 そうですか、何とかしないとな…。 俺は、近くに公園ある事を思い出した。 「なぁ、公園寄らないか」 ハルヒ サイド こ、公園!? 何をするか分からないけど、行ってもいいかもしれないわね! 「い、行くよ!」 あぁ、まだ緊張してる…。 告白か!Hか!それとも…。 「ここで座るか」 ペンチの上…何かのフラグですか!?お母さん! あ、キョンがどうした?と言う目で見てる!?見ないで!見るな! そういえば、どうして、こんな所へ連れて来たのかな。 「ねぇ、キョン…ここ何があるの?」 「あるさ、今は…秋だからな、お!ハルヒ見ろよ」 何んなの?と言いたかったけど、黙って見た。 そこには、ホタルがいっぱい現れて来た。 あたしは、思わず言ってしまった。 「わぁ、キレイね」 「だろ?」 あ、いい雰囲気じゃないの!よし、言っちゃおうっか! 「ねぇ、キョン…話あるの」 キョン サイド ハルヒの横顔を見るとキレイだな…公園へ来たのは成功フラグ成立ってか。 ハルヒは、こっち向いて言った。 「ねぇ、キョン…話あるの」 話?WHY?と調子乗って言いたい所だが、大事な話っぽいのでやめた。 「何だ?」 ってか、こっち見られると…理性か…。 「キョン、あたしの事どう思ってるの」 っとと、ユートピア王国へ行く所だった。 えーと、俺はハルヒの事をどう思ってるのかって? 「えっと、それは…」 その時、誰かがやって来た。 「♪WAWAWA~WA~WA~、犬の~散歩を~してる俺は~悲しいかな~ホ・ト・ト・ギ・ス・Chuv」 俺とハルヒもあんぐりしたね。 谷口が犬の散歩してるとはな…。 「って、うぉぅ!?…もしかして、俺の歌聴こえた?」 ハルヒと一緒に何回も頷いた。 「…スマン、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん…」 あ、谷口が泣いて逃げた。 …ここで終了し、家に帰ったのは言うまでも無い。 ハルヒ サイド あーっ、もぅ!何で谷口が出てくるのよ! 風呂場からキョンが何か言ってるね。 「風呂沸いたから、先に入っていいぞ」 ふん、キョンって優しい所あるじゃないの。 まぁ、ここはお言葉に甘えてっと。 あ、そうだ!ついでに、これを言わないと。 「キョン!覗いたら…どーなるのか分かってるでしょうね?」 「はいはい、分かってますよ」 んな!何この態度~、ムカツクわねぇ。 じゃ、服を脱いで入るかな。 ……… …… … カボーン… いい湯ねぇ…あの谷口の事は忘れそうだわぁ…。 それにしても今日のあたしはダメだったなぁ。 …キョンの事を思うとアレだもんね。 「性欲もてあます」と大佐が言ってた。 はぁー…マジでもてあましたいわぁ…。 キョンは、私の事どう思ってるのかな…。 邪魔者はいないみたいだし…。 サバァッ! しっかりするのよ!あたし! 必ず、白状してもらうしかないわね! 「へっくし!ふぇ~…立ち上がったら寒…まだ浸かってから上がるかな…」 キョン サイド ハルヒは、何やってんだろうな…おっと、妄想はイカンな…。 理性の暴走を沈めるために本でも読むか、んー面白いもん無いな。 俺は、読むのを諦めてベッドへ体重を任せて倒れた。 やれやれ…、ハルヒはどうしたのか知らないけど、まぁいい。 問題なのは、俺はハルヒの事をどう思ってるのかってか、少し難しい質問だな。 あの時、そう俺の世界が改変された時、ハルヒがいない生活を送っていたな。 寂しかった、ハルヒがいないと元気になれない、俺は焦ってハルヒを探したっけ。 あの時思ってしまったのだ。ハルヒに会いたい、会って笑顔を見たいし、 声も聞きたいという思いがあった。 それに、SOS団も無ければ楽しい事は見つからない。 あそこには、古泉・朝比奈さん・長門がいる…俺にとっては大切な仲間だ。 改変世界では、必死に仲間も探してたな。 団長であるハルヒ、俺が入院中に物凄く心配してくれたんだろ? 俺は、色々思ってた時に、扉を開く音がした。 「上がったわよ、いい湯だったわ」 ハルヒは、俺に迷惑掛けるけど、逆に楽しい。 放っておけない奴だからな。 「あぁ、分かった」 俺は、立ち上がって入り口にいるハルヒの頭を撫でてやった。 「…ありがとう」 と言って出た。これは恥ずかしいセリフ集に入るのか? ま、告白するさ。 「な、何、今の…あたしに礼を言った!?」 俺は、風呂から上がり牛乳を飲んで俺の部屋へ行った。 扉を開けると、ハルヒは何かを探してた。 「何やってんだ」 「え、あんたが男なら…アレを持ってるでしょ?」 勘弁してくれ、でもな、昨日から細工したからな。 そんなに簡単には見つからないのだからな。 ハルヒは、俺のPCを見つめ、電源を入れた。 まぁ、PCを探しても無駄だ…って、アレ? 確か、DVDドライブに…。 「無いわね、あれ?DVD入ってるわね」 「や、やめろぉ!」 言った瞬間、ハルヒはDVDアイコンをクリックした。 お、終わった…。 表示されたのは、エロシーンだった…そう、エロDVD入ったままで忘れてた。 ハルヒは、しばらく呆然して真っ赤になって。 「このエロキョン!何て物を見せるのよ!」 うわ、こいつ、シャツを掴みやがった。 「うわっ、ちょ…引っ張るな!た…」 「わっ!?」 バランスを崩して倒れてしまった。 「いってー」 「いったー」 起きようと思ったが、硬直した。 ハルヒも硬直。 何故かって?そりゃ倒れたんだからな。 そう、俺は仰向けのままでハルヒは俺の上にいる。 しかも、しかもだぜ?キスしそうになったぞ。 ほんの3mmぐらいだったぜ。 「……」 「……」 何分経ったかな。沈黙が長く続いてる感じがする。 すると、ハルヒは今の状況を把握出来たようだ。 「…ぁ、ゴ…ゴメン!」 「…ぇ、いや…俺もゴメン!」 取りあえず、DVD終了し、ドライブからディスクを取り出さないと。 何なんだよ、この気まずさは…。フロイト先生も失笑か? 「…ねぇ、あの公園の続き…教えてくれる?」 公園の続き?あぁ、『俺はハルヒの事をどう思ってるのか』だったな。 俺は、ハルヒの様子を確認した。 ハルヒは、頬を赤らめて俯きながらベッドの上に座ってる。 俺も、真っ赤になってるだろうな。 まぁ、仕方ない告白しよう…俺の気持ちを。 「俺は、お前の事は放っておけない存在なんだ。初めてお前に会った時は、惚れたよ。何て言うか…キレイで可愛いって事かな」 ハルヒは、まだ俯いてるか、ちゃんと聞いてるだろうと思い引き続きに言う。 「で、お前がSOS団作ろうと言ってたんだよな。正直に心配してたぞ?ちゃんと成功するのかと心配してたんだよ。 でも、それは成功したのだから安心したよ。そして、仲間も出来たのもお前の努力のお陰なんだよ」 あぁ、あれも言っとくか。 「でもな、俺が入院してた事覚えてるだろ?」 頷くハルヒを確認して、続けて言う。 「俺は、嫌な夢見てたんだよ…ハルヒがいない日常を過ごして来た夢を見ていた…SOS団も無くなってた。 どうしたらいいのかと悩んでいた。そこで初めて、気付いたんだよ。 俺は、お前がいないとダメだって事を初めて気付いたんだよ!SOS団も無いとダメなんだよ…。 気付いたら、必死にお前や古泉や朝比奈さんに長門を探してたんだよ。 だが、やっと会えた。俺の大切な仲間を会えたんだよ。 だから、俺は一人じゃないと確信したんだ…ハルヒ、お前も一人じゃないからな」 「キョン」 ハルヒは顔上げた。 今だ、ここで告白するしかない。 チャンスは一回のみ!神よ、俺を見守ってくれるのか! 「だから、お前の事が好きなんだ!好きだから、お前の側にいるんだよ!」 よし、言ったぞ!返事はどう来るのか。 ハルヒ サイド キョンの告白聞いちゃったけど、何か恥ずかしいな。 でも、キョンの気持ち分かったから…あたしも言うわ。 「キョン、あたしね…あんたに会ってから惚れたわ。 だって、あんたは優しすぎるからよ!だから、あんたと行動したかったのよ。 それなのに、あたしが、あんたの事を迷惑をかけ…『掛けてない!』 え?掛けてないの?普通、迷惑掛けてるのに…。 キョンは、優しい言葉でこう言ってくれた。 「さっき言っただろ…俺は、お前といるだけで楽しいと…だから、迷惑じゃない!むしろ、面白いだけだ! それに、俺に困らせてくれるハルヒは好きなんだよ」 キョン…ありがとう、あたし、決心したよ。 「キョン、あたしは…あたしは!あ、あんたの事が好きよ!好きなんだからね!」 やっと言えた…今まで言えなかった言葉を言えた! 「だから、愛してるわ!」 あ、キョンが驚いてるよ。 段々、顔が真っ赤になってるよ。 あ、そっか…あたしも顔真っ赤になってるんだわ。 「…ねぇ、キョン…あたしの願い、二つだけ聞いてくれる?」 キョン サイド ハルヒも俺の事が好きだとすれば、付き合っていいって事だよな。 しかし、恥ずかしいな…こういう状況になるとは思わなかった。 さっきも、恥ずかしいセリフだらけだった気がする。 「ねぇ、キョン…あたしの願い、二つだけ聞いてくれる?」 はいはい、何でしょうか団長様。 「その…あの…キ、キ、キスして…」 俺の理性に9999ダメージ! ダメだ、今日のハルヒは可愛過ぎるぞ! 耐えるんだ!耐えるんだ!キョン! 「あ、あぁ…してやるさ」 俺は、優しくハルヒを抱き締め、キスした。 確かに、レモン味がするってのはホントだったんだな。 長い時間経ったのだろうか、ハルヒの体温のせいで暖かかった。 少し離れて、お互いに顔を確認した。 真っ赤になってるなハルヒ…俺もだけど。 「最後の願いだけど…キョンとやりたいな」 理性防衛崩壊!溢れ出す理性が俺の体に染まる! 俺の理性が真っ赤に燃えるぅぅぅぅっ! ハルヒの心を掴めと轟き叫ぶぅぅぅっ! …って、某ネタをやってる場合じゃないな。 「それは、ヤりたいってか?」 ハルヒは真っ赤になりながら頷いた。 よし、ヤってやろうじゃないか。 俺は、ハルヒを押し倒し服を脱がせ、全裸になったハルヒを見た。 「…キレイだ」 思わず言ってしまった。 「キョン、今度はあたしが脱がせてあげるわ」 マジですか。 「お、おぃ…それは俺がや…うわ、やめろ!乱暴に脱がすな!」 「あんたが、あたしを脱がせたんだから…これで引き分けよ!」 立場が違う気がするか。 ハルヒが幸せならそれでいい…。 「キョン、来ていいよ」 「あぁ…」 俺とハルヒは、お互い触れ合いながら快楽の地に落ちた…。 ここからは、言えないが…感想だけ言う。 ハルヒは可愛くて意地悪したし、気持ち良かったとな。 それに… ハルヒは、俺の彼女だから、大切に守るさ ハルヒ サイド 翌朝、目を覚めたら、隣に裸のキョンが寝てた。 昨日、何があったなぁと必死に思い出そうとしてあたしの体を見たら、急に恥ずかしくなっちゃったよ。 でも、いっか…キョンの気持ち分かったんだからね。 あたしは、寝てるキョンを見て言った。 「お疲れ様…キョン…」 その時に、キョンが起きた。 「んぁ~…ぁー、おはよう、ハルヒ」 「おはよっ!」 昨日の夜からあんな事やこんな事したから気持ち良かったけどね。 でも、キョンってゴムを携帯してたとはね…このエロキョン! それでも… キョンは、あたしの彼氏で、一番大切な宝物だからね! 完 おまけ おはようの挨拶した時、ドアが開く音がした。 俺もハルヒも驚いた。 だってな、アイツ等がココに来たんだよ。 「おやおや、盛んでしたね」 「あぁ…その…お幸せに…」 「…ケダモノ」 上から順に古泉、朝比奈さん、長門である。 ってか、長門よ…こんな事言ったらイカンぞ。 「な、ななななな…何であんた達がココに!?」 ハルヒは物凄く動揺してるな。 「あなたの妹から貸してくれた鍵…」 長門が説明してくれた。 これは、家の鍵じゃねぇか…と言う事は、無断で上がったと? 「…そう」 何て言うかな…それ犯罪だぞ。いいのかよ? 「…人は犯す事は、たまにある…けど、今回だけは許してくれると」 誰が許してくれるんだよ!?主か!主なんだな! 「…ノーコン」 な、ノーコンかよ…。 「まぁ、いいじゃないでしょうか…キョンさんと涼宮さんはお互い一つになりましたからね」 ちっ、古泉のスマイルが一番ムカつく…。 翌日、学校で「この二人は、付き合ってるんじゃないか」と言う噂があり、 ハルヒと俺は真っ赤になりながら過ごして行ったのは言うまでも無い…。 「WAWAWA、忘れ物~…おや、俺の活躍が少ないぞ!多く出演しろ!多く!頼むぅぅぅぅぅぅ…」